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第3話

京一郎は、ベランダの外を熱心に眺めるモネの背中に怪訝な目を向けた。 何してんだアイツ……? 何かあるのかと窓の外に目を向けたが、そこには変わらぬ景色と青空が広がっていた。 モネはすでに朝食を終えたらしく、水切りかごに洗われた食器が並べてある。 京一郎の視線に気づいたモネは、穏やかな微笑みを浮かべて振り返った。 「おはよう、京一郎。  ……よく眠れた?」 モネの言葉に京一郎はすっと視線をそらした。 「……まぁ。  ってか、何見てるの?」 「別に……。  朝ごはん、何か作ろうか?」 そう言いつつも、視線は再び窓の外に向いている。 「いいよ、てきとうに食べるから」 「そう」 変な奴……とつぶやいてから、京一郎はベッドを下り、洗面台へと向かった。 京一郎が顔を洗い、歯を磨き、朝ごはんを食べ、食器を洗ってもなお、モネは同じ場所で同じ体勢からぴくりとも動かなかった。 すごい集中力だな…… 何をそんなに夢中になって見ているのかと、京一郎は歯を磨きながらモネの後姿を見ていた。 歯を磨き終えた京一郎は、好奇心に負け、モネの隣に座った。 モネはちらりと京一郎へ視線を向けたが、すぐに窓の外へ視線を戻した。 京一郎は伏し目がちなモネの視線の先を追った。 「……スズメ?」 そこにはベランダへ入れ替わり立ち替わりやってくる小さな鳥がいた。 ちょこちょこと動き回る姿は愛くるしい……が 「……そんなにおもしろい?」 「うーん……」 訝し気な表情でモネを見る。モネの目は絶えずスズメを追っている。 スズメはベランダをコツコツつつきまわっている。何か餌になるようなものでもあるのだろうか。 「パンくずでもあげてみる?米粒の方がいいのかな?」 モネに習い、なんとなくスズメを目で追っていると、餌を探し回る姿がいじらしく感じられ始めた。 「やめときなよ。カラスのたまり場にでもなったら、アパート追い出されるよ」 モネからは案外冷静な答えが返ってくる。 京一郎は小鳥やリスの集まるベランダの夢想から、一気に現実に引き戻された。 「カラスってなんで嫌われるんだろうな。  けっこうかわいくない?」 「……さあ?黒いから?」 ちょんちょんとスズメが部屋の方に近づいてくる。京一郎が思わず前のめりになると、スズメは驚いたように飛び立ってしまった。 しまったと反射的にモネの表情を窺うが、モネは変わらず真剣な表情で窓の外を見ている。 安堵と呆れの入り混じった気持ちで、京一郎も再び外へと目を向けた。 空に浮かんだ雲が、ゆったりと流れていた。

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