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回帰したから義弟を真っ当に育てます!

「こ、殺さないでっ!!」  叫び声を上げながら飛び起きたリューリュは、自分の首と胴体が繋がっていることに安堵と疑問を覚えた。 (俺は生きてるのか?)  ペタペタと頬や首を触りながら安否を確かめる。肌は恐怖からくる脂汗でしっとりと濡れていて服も湿っていて気持ちが悪い。 (たしか一家全員処刑されたはずじゃ……)  現状が理解できないままゆっくりとベッドから降りて、真っ暗な部屋の中を進み鏡で自分の顔を確かめた。  肩に届きそうなほどに伸びたボサボサの黒髪の隙間から、海のように深い青色の瞳が見える。 「リューリュ様そろそろ起きられてください。本日は支度をしてレア様をお迎えするようにと公爵様から言付かっております」  突然のノック音とメイドの声に驚いて肩をはねさせた。  基本的に部屋にひきこもって人と関わることが少ないリューリュにとっては使用人ですら避けていたい。 「お、俺は行か……」  行かないと言いかけて、ふとこんなことがずっと昔あったことを思い出した。 (もしかして今日ってレアが公爵家に引き取られる日!?)  レア=サラマンダーはサラマンダー公爵家が没落し一家斬殺の刑に処される原因をつくった人物だ。  公爵家当主であるリューリュの父親の弟である、リーリフ伯爵家当主が亡くなったことをきっかけに公爵家が当時十八歳だったレアを引き取ることになった。  リーリフ伯爵は一代限りの伯爵位を賜った英雄だったが、領地で流行り病が蔓延し伯爵もその病に倒れてしまった。 (駄目だ!レアを公爵家に入れたら公爵家が終わりを迎えてしまう!)  慌てたリューリュは見た目を整えることもせずに勢い良く部屋を飛び出して公爵家の入り口に向かって駆け出した。  止めないと!止めないと!止めないと!  どうして過去に戻ってしまったのかはわからないけれど、これは絶好のチャンスだ。外が怖くてたまらないリューリュでも死ぬほうがうんと怖い。  ──なんとしてもレアを公爵家に入れたりしない!!  そう決意を込めながら入り口の大きな門まで到着したとき、丁度馬車からレアらしき人物が降りてくるのが見えた。 (え……本当に彼なのか?)  回帰前は部屋にひきこもっていてレアを出迎えた経験もなく、ましてや引き取ってからも関わった記憶は一回ほどしかない。  その一回も横を通り過ぎたときに挨拶した程度。しかもそのときにはすでに公爵家に来て二年は経っていたため、いま目の前にいる彼とはまったく似ても似つかない姿だった。 (痩せてガリガリだ……。上等な服を着てるけどサイズもあっていないし……)  誰もが振り向くほどの美丈夫の面影はあるものの、艶のあった黒髪は煤けて汚れてしまっているし、真っ赤な瞳の下には深い隈ができていた。 「君がレア?」 「……誰?」 「お、俺は、リュ、リューリュ。君のお義兄ちゃんになるんだと思う」 「……そう」  興味なさそうに視線をそらされてリューリュはレアだと確信した。  この素っ気なさすぎる態度はレア以外にありえない。  レアは王太子の婚約者であり平民出身だったシノンに恋をしていて、彼以外には見向きどころか興味すらなかった。話しかけられても反応が乏しくて、まるで綺麗に作られたビスクドールみたいだと噂されていたのを覚えている。  そんな彼が断罪されるきっかけとなったのもその重すぎる愛ゆえだった。

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