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義弟がすごすぎた
使用人に用意してもらった洋服を着て、リューリュとレアは手を繋ぎ街へと向かった。
背も腰の位置も高いレアは、真っ黒なスラックスとホワイトシャツというシンプルな装いですら様になっている。
リューリュも動きやすいようにブラウンのスラックスとショートジャケットというラフな格好をしていた。
「リューリュ」
名前を呼ばれてレアへ視線を向けると手を差し出された。
なんだか気恥ずかしくなりその手から視線をそらす。
「ほ、本当に手を繋ぐの?」
「嫌?」
声のトーンが少しだけ落ちたのを感じて、慌てて「嫌じゃない!」と伝えた。
まだ馬車の中だけれど差し出された手に手を重ねる。レアの指がゆっくりとリューリュの指の間に絡まっていく。
きっと周りから見たらすごく仲のいい兄弟に見えるだろう。
(俺とレアは容姿があんまり似てないから兄弟だとは思われないかも)
そんなことをのんきに考えながら小窓から外を眺めた。
「……別の世界に来たみたいだ」
リューリュは狭い部屋の中の景色しか知らない。
幼い頃のことはあまり覚えていなかった。誘拐されたときのショックの後遺症で記憶が錯乱してしまったせいだと医者は言っていたらしい。
「リューリュの純粋な瞳には世界がとても綺麗に見えているんだろうね」
「そんなことないと思うよ」
レアはリューリュのことを買い被りすぎているふしがある。
彼が思うほど純粋ではないし聖人でもない。レアに親切にするのも初めから優しくしようと思ってしていたわけじゃなかった。
だからレアが褒めてくれるたびに少しだけ罪悪感も芽生える。
「あるよ。だからリューリュから目が離せないんだ」
「あはは、レアは、か、過保護だね」
「うん。今はその認識でいい」
よくわからないけれどレアが満足そうにしているからそれ以上は聞かないことにした。
話をしていたらいつの間にか街まで降りてきていたようだ。
「わぁ!ば、馬車で見る景色よりももっとすごいや!」
広々とした街の空気を全身で感じたくて胸いっぱいに息を吸い込んだ。
鼓膜を揺らす人々の声や、店から漂ってくるパンの香り。部屋にこもっていたら感じられない活気がリューリュの心を高揚感で包み込んでくれる。
「魔法書のお店はどこにあるのかな?」
「こっち」
レアが歩幅を合わせるように歩き始めた。
後についていく形でリューリュも進む。
大通りの端まで来ると、書物の絵柄が描かれた看板が吊り下がっている店に到着した。
「ついたよ」
「ま、窓の外からでも本が、た、沢山あるのがわかる」
中に入ると外から見るよりももっと沢山の本が陳列してあることがわかった。リューリュにとっては宝の山だ。
「いらっしゃいませ」
「あ、あの、彼のレベルにあった魔法書を探しているんですけど」
奥から出てきた店主のおじさんに声をかけると、彼が一瞬レアの方へと視線を向けた。
「魔法をどの程度扱えるかお聞きしてもよろしいですか?」
「随分前に四級魔法の本を読んだ」
「四級ですか!?お、おっと、失礼いたしました。申し訳ありませんがこの店には三級魔法までの本しか置いていないのです。四級以上ですと王都でしか手に入らないかと」
リューリュは二人の話を聞きながら一人で百面相をしていた。
魔法には初級~五級までの等級があり、熟練者でも四級に到達することも難しいと言われている。
それをレアは十八歳ですでにものにしているというのだから驚きだ。それと同時に、レアに合う魔法書が見つからなかったことも残念だった。
これでは目的が果たせないままになってしまう。
「そ、そうですか……」
肩を落としながら、店主に礼を言い店を出た。
何事もうまくはいかないものだ。
レアが規格外すぎてリューリュの想像を二個も三個も上回ってしまっている。
「リューリュ落ち込んでる?」
「そ、そうじゃないよ。レアは俺の、じ、自慢の義弟だって実感してたんだ」
「義弟……リューリュにとって俺は自慢?」
「もちろん!みんなにレアはすごいんだって自慢して回りたいくらい!でも、俺だけがレアの凄さを知っていたら嬉しいなって思ったりもするな」
可愛くて強くて優しいレアのことを隠しておきたいという義兄心が働きまくっていた。
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