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第22話 立会人とクリスマス
「ナオ、クリスマスに籍を入れよう、俺からのプレゼントは家族と番だ。だから俺にも俺だけの家族と番をプレゼントしてほしい」
僕は泣いた。コクコクとうなずく、抱きしめてくれるこの人の温かさにどれだけ助けられてきただろう。
僕らはヒートが終わってから報告も含めて両親の家に来た。
僕に無事ヒートが来たことは両親も手を叩いて喜んでくれた。事件のことで僕がこっそり不安になっていたことも見抜かれていた、本当にこの両親には頭が上がらないと思った。
「3週間遅れましたが、無事ヒートが来ました」
「ナオ君…良かった、体が無事で」
お母さんが僕を抱きしめてくれる。僕はお母さんとお父さんそれぞれの顔を見てから涼介さんの手を握る。さっき役所でもらった婚姻届けを両親の前へ出した。
「俺らクリスマスに入籍しようと思います、それで証人をお願いします」
涼介さんが両親に頭を下げた。僕もそれに合わせて頭を下げる。
「次は結婚式だね、君の手を取ってバージンロードを歩くのが楽しみだ」
お父さんが僕らの頭をわしゃわしゃ撫でてにっこり笑う。お母さんが私も歩きたいと言ってにぎやかになって、出そうになっていた涙が引っ込んだ。
2週間後僕らはテル君たちの結婚式に参列した。
水原さんとテル君の結婚式はパステルカラーに彩られたかわいらしいものだった。
僕は初めて友達の結婚式に参列する。人前式と言うことで参列者はこの結婚式の証人となるそうだ。僕はここで一つ新婦側の立会人代表と言う大役を任され、おこがましくも最前列に座っている。
僕が少しだけ楽しみにしていた水原さんの髪色はプラチナブロンドで実はそれが地毛の色だそうだ。祭壇の前でテル君を待つ水原さんは少し緊張していて。握りしめていた手袋が震えていた。
そして、テル君をエスコートして入場したのは水原さんのお父さんだった。はっきりした顔立ちと水原さんと同じプラチナブロンドの髪で外国の方だと見て取れた。ということは、水原さんはハーフなのか。水原さんのお父さんは勇気づけるようにテル君の手をポンポンと叩く。ヴェール越しにテル君が照れ臭そうに笑いかける姿は家族関係がうまくいっているのが伝わって涙ぐみそうになった。
真っ白なバージンロードを一歩ずつ丁寧に進むテル君は最高にきれいだった。そして、祭壇前に着いたテル君の手を取る水原さんもまた優しい顔だった。
開式宣言がなされ、結婚宣言をする。二人は「お互いを魂の番と認め。楽しいことも苦しいことも二人で分かち合い、平和な家庭を築き。生涯変わることのない愛をここに誓います」と宣言した。
魂の番はアルファとオメガが惹かれあうのは魂を分け合って生まれたからと言う伝承から、お互いが唯一無二で最高の相性であると言うことを表す言葉だ。僕は隣に座る涼介さんの手を握った。
水原さんの親戚の男の子が指輪を二人の前に運ぶ。指輪の交換だ。水原さんが緊張に震えているのをテル君がそっと手を添えてなだめている。無事交換が終わるとテル君がまっすぐに水原さんを見た。水原さんは恭しくヴェールを上げて頬にキスをした。
ふたりの笑顔が僕たちにも伝播する。
結婚誓約書の署名、僕の出番だ。涼介さんが勇気づけるように手をぎゅっと握ってくれた。僕は立ちあがってテル君の隣に立つ。水原さんの立会人代表はデビューからお世話になっている編集さんだそうだ、誰よりも泣いていた。僕らは順番に署名した、結婚誓約書をテル君たちが皆に見えるように胸の高さに掲げる。
司会の人が「皆さまの前で結婚と真実の愛を誓われました。ご賛同の方は盛大な拍手を」と言うと。皆の祝福の拍手が鳴り響いた。これ以上に無いくらいに幸せそうだ。
こうして人前式での結婚式は幕を閉じた。
僕が一仕事終えてやりきった感をだしていると、涼介さんが僕の手を取る。
披露宴会場は水原さんの絵本をモチーフにしたテーブルセッティングでとてもかわいらしかった。乾杯は小橋君が面白おかしくしゃべって盛り上げていた。会場に来られなかった水原さんのおばあさんとテレビ電話もしていた。
テル君が始終笑っている、ファーストバイトでテル君がすごく大きなスプーンを持ってニヤリとしているのは面白かった。余興も編集さんたちが盛り上げていてにぎやかだった。
水原さんのお父さんとお母さんが僕らのテーブルにお酌に来てくれた。お母さんは日本人でお父さんはイギリスの人だそうだ。「これからもノアとテル君をよろしくね」と言われて水原さんの名前がノアと言うのを知った。ご両親はとてもやさしそうで安心した。僕もよろしくお願いしますと盃を返した。
最後に両親への手紙を読む水原さんの横でテル君も泣いていた。
結婚式と言うのはなんて暖かいんだろう。幸せなのに涙が出る。
「これがありがとーしあわせだーなんだね」僕は涼介さんに言うと、涼介さんがニコニコとして手を握ってくれた。
僕らは一旦家に戻って紙袋とサンタ帽を手にして2階の応接室に行った。今日は牧野家のクリスマスパーティーも行われていた。相変わらず楽し気な雰囲気にほっこりする。クリスマスチキンを見たのも初めてならそれが4つも並ぶテーブルと言うのも初めてだった。手作りの飾りは僕も昨日手伝った。我ながらかわいらしい仕上がりだった。
僕たちは牧野家の子供たちに用意したプレゼントを渡す。子供相手に僕がサンタになったのは初めてだった。子供たちは照れながらもうれしそうな笑顔でプレゼントを受け取ってくれた。
僕が正装しているのをかっこいいと褒めてくれる子もいてちょっとポーズもとったりしておどけてみた。
何より笑いが絶えない。
クリスマスパーティーって何をするんだろうって思っていたがいつも通りの食事とおしゃべりと笑顔だ。僕の膝には今日も晴斗君が座っていてつかまり立ちも出来るようになったそうだ。ますます表情豊かでかわいいことこの上ない。
僕はケーキを食べながら揺れていた。
「僕今年のクリスマスはきっと思い出に苛まれて耐えられないって思ってたんだ。でも、テル君の結婚式も幸せだった、このクリスマスパーティーもすごく楽しい。もう、とっくに過去なんだって今思い知ってる」
僕はサンタ帽を直して
「ほら、サンタになれたよ。こんなこと1年前には想像だってできなかった。未来が不安だった僕はもういないよ、全部シェルターのみんなと牧野の家族、それに涼介さんのおかげだ」
僕の目の前のこの日常と言う特別な景色は僕だけの景色だ。
涼介さんはサンタ帽ごと僕の頭をワシワシと混ぜておでこにキスを落とすと立ち上がって
「俺と直哉は明日結婚するぞ!」
と叫んだ。皆は一瞬動きを止めた後、おめでとーと手を叩いて喜んでいる。
そして、次の日婚姻届を出して僕らは家族になった。最高のクリスマスプレゼントだ。
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