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第1話
ランガスター家の当主であるフェリックスは息を呑んだ。
従僕の面接のために応接室で待っていた青年……シャノンの美貌に胸を貫かれたのだ。
従僕とは召使のことだ。銀食器磨きなどの雑用だけでなく、来客対応や給仕など、人目に付きやすい仕事も行う。そのため、器量だけでなく容姿の良さも求められる。
だが……あぁ、なんと彼は美しいのだろう!
整えられた黄金の髪は艶やか。茶の瞳にはオリーブ色が重なり、神秘的だ。肌は透き通るようだが、頬にはほんのりと紅が差して、若々しさを感じられる。
「お初にお目にかかります、フェリックス・ランガスター様」
目元を緩ませたシェノンが礼をする。彼の所作は川の流れのように淀みなかった。
この時点で、フェリックスは彼の採用を決意した。
理由は、見目麗しい彼を、もっと眺めていたいという不純なものだ。
フェリックスとの面接の前に、じいや——この屋敷の執事との面接を行っている。彼もシャノンを屋敷に迎える気満々だったから、まったく問題ない。
フェリックスは彼をソファに座らせ、自身はその対面に浅く腰を降ろした。
『前はどこに務めていたのか』や『どのような事を任されたのか』などの、形式的な質問を投げる。
懸命に答えてくれるシャノンの言葉は、フェリックスの耳には言葉として入らず、甘美な歌のように聞こえた。
自分より三つほど年若い彼の声には、落ち着きこそあるものの、若干の未熟さが残されている。
ヘーゼルアイは真剣そのもので、真っすぐにフェリックスを捉えている。しかし、貴族であり面接官である男の前で、委縮しているのが隠しきれていない。
緊張しいなのだろう。視線も声も気を配っているようだが、何度も目を瞬かせている。
数多くの人と関わってきたフェリックスは、その仕草は過度の緊張によるものだと知っていた。
シャノンの気質が、むしろ可愛らしいと思った。人前に立つことの多い従僕になるには苦労するだろうが……彼の立ち振る舞いをみれば、いらぬ心配だろう。
「——いずれは、執事になりたいのです」
まったく話を聞いていなかったフェリックスは、彼のはにかみで意識を現実に引き戻された。
現実とは悲しいものだ。しかし目の前にいる彼は、夢のような甘美さを兼ね備えている。
——彼を手籠めにしてやりたい。
仄暗い欲望が、腹の底から湧き上がる。
幼い頃から、男色の気があるのを自覚していた。それなりに年齢を重ねた頃には、密かにボーイフレンドをいくつか作り、年頃の少年らしいエロティックな遊びに興じたものだ。
しかし、先代である父が亡くなり、当主となったフェリックスは忙殺された。
仕事によるストレスを溜め込んだ。男遊びに興じる暇がないのに、手淫では満たされなくなっていた。
悶々とした日々を過ごしていた時、好みの青年が屋敷で働きたいと申し出た。
腹を空かせたライオンの檻に、肉が放り込まれたようなものだ。脂の乗った上等な肉を、黙って見ているだけの獣などいない。
つまらない面接もほどほどに、フェリックスは合格を言い渡した。
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