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第1話 神々の祠

 中津公国には神世と常世の狭間と呼ばれる場所がある。  狭間には、神様の短冊が降ってくる「神々の祠」という洞窟がある。  短冊は神々から御饌のリクエストが書いてある大事な注文票だ。 「わぁ! 今日はいっぱいだぁ」  (はる)は祠の天井に向かい、手を広げた。短冊が、ひらひらと振ってくる。  手の中に落ちてきた短冊を、晴は一枚ずつ確認した。 「えっと……花の神様と春の神様はカナリア蜜の蜜菓子、海の神様は川フカの煮つけ、土の神様はビックリ根菜の煮つけ、か」  ほくほくした気持ちで、何度も短冊を眺める。 「神様たちは食べるのがお好きだなぁ」  短冊を捲る手から一枚、ひらりと落ちた。 「あれ、これは……」  黒くて小さな文字が、控えめに書かれている。 『君と同じ食事をください。 夕暮の神』  晴は短冊を、じっと見詰めた。 「まただ。本当に僕と同じでいいのかな」  前回も、前々回も同じ注文だった。 「自分の好きな物を頼んでほしいんだけどな」  晴はそのために狭間に常駐する、御饌のための御厨守だ。 「どうして、僕と同じがいいのかな」  短冊に書かれた小さな文字を、すぃとなでた。 「どんな神様なんだろう」  気になって、狸の耳がぴくぴくと跳ねた。  晴は狸の獣人だ。人の体でも耳と尻尾だけは隠せない。狭間にいると本来の姿が出るから、獣人以外の姿に変化できない。 「よし、全力で美味しい御饌を作ろう。急いで御厨に戻って、お料理開始しよう」  短冊を握り締めて、晴は御厨に走った。

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