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第4話 桃の薔薇ケーキ

 御厨に戻った晴は、早速料理を始めた。  肉料理にキラキラデザート、豆のスープを作り終えて、御饌台に載せる。御饌台に積んでおけば、出来立ての状態を保って神様に届けられる。 「僕が好きな甘味、好きな甘味……」  戸棚をごそごそ漁る。次に冷蔵庫を確認した。 「うん、材料ありそう。アレに決めた」  ココアのスポンジを焼き、バニラ風味の生クリームをホイップしていく。 「スポンジの間に、桃を挟みまーす」  たっぷりのバニラ生クリームを乗せたココアスポンジの上に、薄切りにした桃を並べていく。その上に生クリームを塗って、スポンジを重ねる。 「ここから、だね」  花弁のように薄く切った桃を、重ねて並べていく。スポンジの上いっぱいに重ねる。ケーキの上に薄紅の薔薇が咲いた。 「できた! 桃の薔薇ケーキ、おひとり様食べきりサイズ!」  満足した心持でケーキを眺める。 「いつもより上手にできちゃった」  ほくほくした気持ちで、晴は短冊を書き始めた。 「特別な日に自分に作るケーキです。気に入っていただけたら嬉しいです」  書き上げた短冊を、すっと撫でる。 「美味しいって言ってくれたら、いいな」  短冊を眺めて微笑む。晴は他の短冊を書き始めた。 「えっと……山の神様へ。今日のお肉料理は、ガルガル猪の鍋です。星の神様、月の神様へ。今日のデザートは、夜空色のシュワシュワゼリーに星屑のヨーグルト添えです。秋の神様へ。ポッポ豆を使ったポタージュです。濃厚でクリーミーに仕上がりました……」  書いた短冊をそれぞれ御饌に添える。 「よし、準備できた。神々の祠に行こう!」  御饌台を引いて、洞窟に向かう。ぱっくり開いた大きな洞窟に入り、鉱石が照らす道を進む。 「御饌をお供えにきました! 美味しく食べていただけますように!」  両手を広げて、天井に向かい叫ぶ。白い柱が降りて、御饌台を包んだ。光に触れた料理が解けるように消えていく。白い光が、すっと引いた。 「今日は、これで終わり」  晴は御饌台を片付け始めた。  ひらり、と何かが舞い落ちて、晴の頬を掠めた。 「何か落ちた……あれ、短冊だ。御饌の注文の時間じゃないのに」  短冊に書かれた名前を見て、心臓が小さく跳ねた。 「夕暮の神様が、お返事くださったんだ」  短冊の文字を目でなぞる。 『とても美しいケーキですね。まるで君の心のようです。夕暮の神』  胸の鼓動が、トクトクと走った。 「褒めてもらっちゃった……嬉しい」  心が、ジンワリ温かい。晴は短冊を胸に抱いた。

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