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第五節 弟
「どうだった、誠一郎くんは」
今日、荻野は弟に会いに札幌まで出ていた。
「別に、相変わらずだった」
そう溜め息と共に漏らしながら、荻野は荷物を置く。
弟との関係修復を勧めたのは、杉崎だった。身を案じてくれる身内をあまり無下にするものではない。たとえ分かり合えないにしても、理解しようとする努力はするに越したことはない。会って話ができる身内がいるというのは、家族を亡くし、身を案じてくれる親族もいない杉崎にとってみれば、羨ましいことだった。
「相変わらず鬱陶しいし、何をしてぇのか分からん」
「そっか」
「しばらくはここに住むと言ったら泣いていた」
「会いに来る気かな」
「さぁな。来るなと言ったが」
「ちゃんと念押しとけよ」
「てめぇから連絡入れとけ」
「なんで俺が」
「めんどくせぇから番号削除した」
「オイかわいそうだろ」
「お前がいるからいいだろ」
いいから飯だ、と言ってダイニングテーブルに腰を下ろす。
「カレー」
「においで分かる」
「自分でよそえ」
「おれは疲れてんだ。あの人の相手は……お前が行けと言ったから」
「わーったよ。大盛り?」
「普通盛り」
「どーせ足りなくてお代わりするんだから、大盛りな」
「じゃあなんで聞いたんだよ」
二人で食卓を囲む。これが、何の変哲もない日常。いずれにしても、ここが彼らの戻る場所だ。
棚の上には写真立てがある。莉子が焼き増ししてくれたもの。初夏のラベンダー畑を背景に、二人の男が写っている。
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