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第41話

先輩に抱き締められていると、不思議なくらい身体の力が抜けていく。 さっきまで張り詰めていた心も。 強張っていた身体も。 全部。 先輩の温もりに溶かされていくようだった。 しばらくそのままでいると、今度は別の感覚が襲ってくる。 「あ……」 「どうしたの?」 「お腹空いた」 その一言に先輩が吹き出した。 「あら」 「泣いたらお腹空いちゃいました」 「元気な証拠ね」 先輩は嬉しそうに笑う。 「何食べたいの?」 少し考える。 だけど答えはすぐに出た。 「先輩が作るものなら何でもいい」 その言葉に先輩は照れたように目を細めた。 「そんなこと言われると困るわねぇ」 そう言いながら腕を離す。 「冷蔵庫に何があったかしら」 キッチンへ向かおうとした、その時だった。 胸の奥が少しだけ寂しくなる。 温もりがなくなったせいだろうか。 気付けば先輩の服の裾をそっと掴んでいた。 「先輩」 「んー?」 振り返った先輩を見る。 少しだけ恥ずかしかった。 でも、今なら言える気がした。 「ご飯作る前に」 一度深呼吸する。 「もう一回だけ、ぎゅってしてくれませんか」 先輩は驚いたように目を丸くした。 それから少しだけ意地悪そうに笑う。 「それは」 ゆっくり俺に近付く。 「私の返事に肯定って捉えていいのかしら?」 頬が熱くなる。 照れくさい。 でも、もう逃げたくなかった。 「割と甘えん坊で良ければ」 小さくそう答える。 先輩は一瞬だけ目を見開き。 次の瞬間、嬉しそうに笑った。 「あら」 優しく俺を抱き寄せる。 「そういうの好きよ」 もう一度抱き締められる。 今度は自分から少しだけ先輩の背中へ腕を回した。 先輩は何も言わない。 ただ優しく背中を撫でてくれる。 「……お腹空いた」 先輩が小さく笑う。 「そうだったわね」 「今日はいっぱい食べなさい」 「はい」 二人で顔を見合わせる。 自然と笑みがこぼれた。 その笑顔は、きっとお互い同じ理由だった。

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