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5 クラゲ
ーー新宿のビル、地下1階のBar
匠海の知り合いがやってるお店があるというのでやって来た
僕は待ち合わせ時間よりも1時間遅れでたどり着く
南国生まれの僕は都会のスピードにはなかなかついていけない……なんて言い訳をいろいろ考えながらBarのドアを開ける
カランカラン
「いらっしゃいませ、お一人ですか?」
白シャツに黒のベスト、きっちりと整えられた服装、いかにもな店員さんに声をかけられた
「待ち合わせなんですけど……」
濃い紫色のふかふかな床にオレンジに近い黄色の照明が店内を雰囲気よく照らす
カジュアルなお店って聞いてたんだけど、思ったよりも大人な空間にしり込みしちゃう
「お連れ様のお名前をお願い致します」
「三条の名前で予約してるはずです」
「三条様ですね、こちらへどうぞ」
店員さんに連れられて奥の個室に案内される
人目に付かないところで会うなんて、なんか芸能人っぽいな~なんて思いながら進むこと数十秒
こじんまりとした部屋に濃い紫色のソファーと茶色いテーブルが置いてある。そこにひとりの男が長い脚を組んで座り何かしらのカクテルを口に運んでいた
「あぁ、光。もう来たの? 早かったね」
チャコールグレーのスーツが嫌みなくらい似合っている彼は、伏し目がちな視線をこちらに向けることもなくどこか宙を漂わせていた
きっとこの男の中には店内に流れるBGMとはまた違った曲が流れているのだろう
ちなみに僕のなかではR&Bの曲が流れている。えへっ
僕と同じようにこの男の周りの空気も独自の流れになっているようで助かる
こういうとこ相性いいよね僕たち
そう、これが僕が匠海と一緒にいる理由。
端的に言えば、波長が合うのである
「デビュー曲聴いたよ」
僕がソファーに座るやいなや匠海がしゃべりかけてきた
う~いま僕のなかのBGMに体がノッてきたとこだったのにー
別の曲のイントロが流れ出してきちゃったじゃないか。まぁ、僕が作った曲なんだけど
匠海が目をつむり自身の膝の上でリズムを取り出す
あ、その部分? 僕の思ってたパートと違う……こういうとこ噛み合わないよね僕たち
同じ曲を聴いても僕と匠海では反応する部分が違う
体に染み込んだ音楽ルーツが違うからだろうか
「匠海そこ、好きなの?」
「うん、リズムが一番好き」
「へぇー」
人によって感じ方が違うっておもしろい
数時間後
前言撤回! 多様性の時代に何言ってんのって言われてもこれは受け入れられない!
僕の目前には匠海の胸板! 抱き締められている、外で。地下のBarから地上へと繋がる階段の踊場、知ってか知らぬかここだけ明かりの点る場所! 壁際に追い込まれ今にも襲われそうっ
意を決してぐっと胸板を押し返してみるがびくともしない。いつもはふわふわしてるくせにこういうときだけしっかりしやがって……
「た、匠海近いよ、離れてっ」
「光、そろそろいいでしょ? 僕たちの関係、公にしない?」
これは……意見を聞いているようで匠海の中では決定事項なのだろう
こういうときの匠海は意地でも引かないのをまぁまぁ長い付き合いのなかで嫌というほど思い知ったところである
この男のねちっこさは一級品だ!
「ダメだってば……」
「光」
匠海が僕の耳元に近付き僕の名前をささやいたその瞬間
ぶわっ
と空間ごと包み込む強いフェロモンを発し
コレは俺のものだという独占欲を丸出しで僕を責め立てる
「あっ……たく、み」
突っぱねていた両手からだんだんと力が抜けていき、やがてすがるように指を添わせる
嫌だ……! 負けるな光
目の前の男から目が離せない。まるで捕食者のようなその存在から……
匠海、今までこんなことしたこと無かったのに……なんで
そして、徐々に
自分から、顔を近付けるのである
男の唇を見つめる
少しだけ背伸びをして赤く熟れているそこに口付ける
「ん……ぁ、はぁ……はっ」
くちゅ、ぴちゅ……ぴちゃ
「んぅ……ふっ……んぁぁ」
ぬちゅ、ちゅ……くちゅ……と水音が頭に響いて痺れる
この身体がつくづく嫌になる、本能に抗えないこの身体が
んぅ……っ、気持ち……いい
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