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11 クラゲ
昼が過ぎて午後のひとときに駅中で買ったスイーツでも食べたいな~なんて思う頃、そーっと侵入者みたいに家に帰ると、匠海がずーんっとした表情でリビングのイスに座っていた
「おかえり……」
「ひゃっ居たの? え、どうしたのその顔、もしかして、寝てない……?」
「待ってた」
僕たちは半同棲みたいな生活をこの部屋で送っている。まぁ、匠海が住んでた家に宿無しの僕が転がり込んだだけなんだけどね
まぁそういうこと
「待ってたって、ずっとそうしてたの?」
僕は匠海に近づきテーブルを挟んで向かい側のイスに腰掛けると、ずーんとしている匠海と正面から交わる覚悟を決めた
「誰といたの? ……まぁ、聞かなくても分かるけど」
どこにいたの、じゃなくて誰といたの? なのか、まぁそうだよね、きっと僕の身体からは匠海以外のアルファの匂いがぷんぷんするはずだ
「浮気してきた」
僕は真っ正面から告げる。逃げも隠れもしない
「……そっか」
その“そっか”には怒りは含まれていなかった。諦めと焦燥、悲哀。そんなものを感じた
「ちゃんと話すときが来たね」
「……」
匠海はなにも言わない。ただ、目で訴えている。母に置いていかれないように必死ですがる幼子のように……
「匠海、別れよう」
はっきりときっぱりと目の前の男の赤くなって渇ききった瞳をしっかりと見つめて
「……」
なにも言わない。ただ、瞳を覗く許可を出していた彼のまぶたが静かに下りていく
そのまま、僕が玄関を出るまで開くことはなかった
僕の記憶にはそうして佇む匠海の姿とテーブルの上にあるヒート助長剤の入った小瓶&注射器の存在だけが鮮明に残っていた
キィー……ガチャン、
パタンっ……
パタパタパタパタパタ
階段を3階分くらい駆け降りて立ち止まると、
振り返ってつぶやいた
「はぁ……疲れたな」
僕はゆっくりとエレベーターの方へ向かう
マンションの外に出るまでは彼のことを考えよう
彼との思い出を反芻する
僕を見つめる瞳が好きだったな……
それだけ、ただそれだけだよ
+ + +
僕は再び宿無しになった
なんだか昔に戻ったみたいだな
今の事務所に拾われる前の
いろんなとこを転々としてヤドカリ状態のあの頃
……さて、今度はどこのα様 のもとへ行こうか
僕は今日もこの身ひとつで難所を潜り抜ける
自分にふさわしい場所を求めてね
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お読みいただきありがとうございます!
クラゲ編一旦、完結です。
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