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第14話 【オーウェン視点】蜜月の時間2

体を拭き終わると、僕はベットに気怠そうに身を預けるリリズの顔を覗き込んだ。 「リリズ、よかったらマッサージをしましょうか?」 僕の言葉にリリズは驚きながらも眉を寄せた。こういう反応はリリズっぽいと感じる。 「なぜだ? 普段からはお前は俺にそんなふうに気を遣っていたのか?」 「いいえ、普段はあなたから僕にお願いしてました」 真っ赤な嘘だけど、リリズがどんな反応をするか、僕の言葉を信じるか。 僕を追い払わなくなったリリズに関わりたくて仕方がないのだ。 リリズは動じることなく鼻を鳴らした。 「オーウェン、記憶がないからといってお前の嘘を俺が見抜けないと思うか? 」 「本当です」 「いいや、嘘だ」 オーウェンは笑った。 リリズが今の状況に悲観せず笑って話してくれることが嬉しかった。少しだけ、このままならいいなんて思ってしまうくらいには、僕は身勝手な人間だ。 「あなたがストレスを抱えていると思ったから…」 リリズが僕を見る目が僅かに変わってきている気がする。 「なぜわかる?」 「いつも見ていたからわかります。言い忘れていましたが、僕達は“共鳴“します。強い感情の時だけですが」 “共鳴“という言葉に、リリズは目を瞬いた。少し考える仕草をした後に、顔を近づけて僕をまじまじと見る。 なんだかくすぐったい。 「共鳴ね、なら二人とも気持ちいいとき俺達はどうなるんだ?」 「は…?」 気持ちいい…とき…? 「どうした? 知らないのか?」 「それは…」 僕はリリズの澄んだ目から視線を逸らした。リリズはそんな僕の反応を楽しむように距離を詰めてくる。 いつの間にかリリズのペースに飲まれてしまっている気がする。 「いつも見ていたならわかるだろ?」 だめだ。 心の中で警鐘が鳴る。 リリズを騙して恋人のフリをしている僕がリリズに近づけるのには限界があるはずだ。 記憶を取り戻した時、リリズが傷つくことはしたくない。 リリズの唇がゆっくりと近づく ──止めることはしなかった 僕は微動だにせず、ただ目を瞑った 「…リリズ…」 「なんだ」 「僕は…」 こんな感覚になることは今までもなかった。 自然と出そうになる言葉に、僕自身も驚いていた。 「──ッ──!!」 ──と、 リリズが急に胸を抑えて俯く。 「どうしたの!?」 「共鳴ってこういうことなんだな」 「僕に共鳴した?」 リリズがフッと笑う。 「ああ、でかい犬に飛びつかれたのかと思った。…お前は俺が好きすぎだ」 ……?? ……好き過ぎ? 茫然とする。 「それはあなたの感情じゃないの?」 「お前だろう」 「いいえあなた自身の感情です」 リリズは今度は吹き出して、首を横に振る仕草をした。 「俺が? お前を好きなのか?」 「どうなんです?」 「オーウェン、俺達は恋人だったかもしれないが、俺は覚えていないんだぞ?」 オーウェンはリリズを見て微笑んで見せる。 「それでもあなたはあなたです」 「オーウェン…」 「僕が嫌い?」 そう聞くとリリズは背を向けて布団で顔を隠してしまったけど、 小さく「嫌いじゃない」と言ったのが聞き取れて、暖かい気持ちになる。 記憶がなかったらリリズは僕の世界から居なくなるなんて、どうしてそう思ったのだろう。 リリズはいつだって自分の感情に正直に、真っ直ぐに物事に向き合っている。 どんなことがあっても僕の目の前にいるのは本物のリリズだ。 そんなリリズの側に居て、守りたいと思う僕の気持ちもまた本物だと。 ──この時はまだ、そう思っていた。

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