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第24話 リリズの葛藤

⭐︎ここまでの主な登場人物⭐︎ リリズ(男)……… デヴロー家の一人息子であり、剣技のスター選手でもある。人の感情の“色“を見る能力を持つ。 オーウェン(男)……… リリズの元婚約者。言語を使わず伝達する能力を持つ。もとはハルメレイ家だったが、母の再婚でアッシュフォルデ家に入る。 カナリア(男)……… 剣技選手、漁師、オーウェンの実父に育てられた孤児 メアリー (男)……… リリズの幼なじみ、鍛冶屋 ⭐︎その他の登場人物⭐︎ カシアン(デヴロー家)………… リリズの父、記憶を消すことができる ロリーズ(デヴロー家)………… リリズの母 ケイデ……………………………… デヴロー家の使用人として、カシアンに仕える [リリズ視点] 何かの間違いであってほしい。 教会からの帰り道…呼び起こされた記憶はまだ断片的だが、オーウェンの笑う顔や、一緒に野山を駆けていた情景が確かにあった。 拳を握る。 ――――なんなんだ ――――何が起こってる!? 『オーウェン!』 小さかった頃の俺がオーウェンを呼んでいる。 『リリズ』 あどけないオーウェンの声だ。 『オーウェンの父上は明日───の家に行くんだろ?』 『うん、たぶんそう』 俺はオーウェンの色からこれが本当か嘘かを見抜いている。 ───これは本当 『何で、そこに行くんだ?』 『さあ? よくわからない』 ───これは嘘 たった、それだけ。 具体的なことは何もない、それでもその会話が父に確信を与えた。 連盟は王の裁可なしに軍を動かそうとしている、と。 父がなぜ王と連盟のいざこざにそれほどこだわるのか。王制は確かに廃れつつある。王制が廃れれば貴族の地位も危ういかも知れない。だからといって数ある貴族のうちでデヴロー家がわざわざ口火を切ることはなかったはずだ。 だけどあの時そんなことは考えていなかった。 俺はただ、父を喜ばせたいと思っていた。 子供ながらに両親が俺を見る目が憂いを含んでいること、失望の色、それを知っていたから。 何をしたかなんて知らない。 親が俺をどう思うか。 そのときの自分には、それしかなかった。 ──朧げな記憶だ 「───はぁっ……はっ……っ……!!」 俺の力は弱い。だがその侮られた力がハルメレイ家から情報を奪った。伝達することを生業にする家だ。当然、そのことで王の不信をかったに違いない。 ハルメレイ家を亡き者にしたのは俺だ。 オーウェンから家族を奪ったのも… 目の前が真っ暗になったみたいだ。 これは俺の色なのか? 昔の俺は、オーウェンの感情の“色“を確かに見ていた。なのに大人になってオーウェンには色がなくなっていた。 オーウェンは明るくて人懐っこい性格だが、きっと大きな何かを失った。 俺が見る“白“はオーウェンがなくした何かなのだと思うと、気持ちが地の底まで落ちていくような気がした。 それは無意識でも俺が何かに懺悔するように教会へ行っていた理由なのかもしれない。 オーウェンが無くした見えない感情の色。 俺は記憶を失う前のこと少しずつ思い出していた。 手繰り寄せるように探したもののなかに、子どもの頃の記憶もあって。 それがオーウェンとの記憶だとわかるまでには時間はかからなかった。 幼い俺とオーウェンはよく待ち合わせをして遊んでいたから。 それから時は流れて、 ──あの日も 俺はオーウェンが仕事を終えるのを待っていた。 それなのに急に襲われて。 オーウェンが俺の名を叫んでいた。 (そういえば……) 俺はジャケットのポケットを探る。 チャリッと音がして、あのネックレスが入っていた。 あの時、地面に投げ出されたと思っていたのは気のせいだったのだろうか。 ほっとしてポケットから出した瞬間、またあの日の映像がフラッシュバックのように頭に入ってくる。 (───!!) ネックレスはまるで罪で染まったみたいに真っ黒になっていた。 『僕はデヴロー家を許さない』 オーウェンが言っていた言葉が思い出される。 俺はオーウェンから家族を奪い、人生を奪った。 そしてこのネックレスだって。 「────ズ………リリズっ!!」 遠くから俺を呼ぶ声がする。 オーウェンだろう。 本当は俺を憎んで罵って欲しかった。 ──なのに どんなに酷いことをされてもそばを離れたくない、守りたいなんて、どうかしている。 いままでは犬みたいに俺に懐くオーウェンを見てきて、嬉しくて心が落ち着くと思っていた。 今はそんな優しさがなにより怖い。 俺を守りたいオーウェンはまた酷い目に遭ってしまうかもしれない。 気がつくと俺は身を低くして隠れていた。 誰に何を言われたって、こそこそしたり言い訳なんてしてこなかったのに。 自分が弱い人間なことはわかっているつもりだ。 それでもオーウェンの真っ直ぐで揺るぎない愛情が、俺自身をより汚いと感じさせていた。

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