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第一章 高等部 4話 はじめて会った日13
そこで、記憶は一度途切れた。
屋上の風が、頬を撫でる。
政輝は瞬きをして、高校の屋上へ戻った。
隣には、今の涼がいる。
制服の襟元を整え、もういつもの顔へ戻りかけている。
さっきまで息を乱していたことも、目元が潤んでいたことも、下へ降りれば誰にも分からない。
「何」
あの頃の疲れは、ただの眠気だった。
家の予定の多さや、大人の都合に付き合わされる重さが、子どもの体に残っていただけだ。
でも、今の不調は違う。
涼が壊れたのは、あの時からだ。
あの、忌々しい——。
そこまで思い出しかけて、政輝は考えるのをやめた。
思い出そうとしただけで、胸の奥がざわつく。
今はそこへ触れるタイミングじゃない。
違う。
何もかも。
それでも、同じところもあった。
昔から、涼は平気そうな顔に戻るのが上手かった。
疲れていても、眠くても、少し顔色が悪くても、誰かに声をかけられれば、すぐにいつもの顔を作る。
涼が横目で見た。
「また変な顔してる」
政輝は少しだけ笑った。
「変わんねぇなと思って」
「だから、何が」
「知らねぇ」
「そればっかりだな」
涼は不満そうに言って、制服の袖口を直した。
もう戻るつもりの顔だった。
政輝は立ち上がりかけた涼の横で、潰れた煙草の箱をポケットに押し込む。
下へ戻れば、涼はまた生徒会長になる。
寮へ戻れば、寮長になる。
完璧に戻る。
まさきはその瞬間が好きではない。
小学生だった頃の、どこかまだ純粋で柔らかかった涼まで一緒に削れていく感覚がある。
それでも、それを止める方法を、政輝はまだ知らなかった。
ただ、見ているという事実は、ずっと前から変わらなかった。
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