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最終話 ワガママ王子の結婚相手

ハロルドはきゅっと唇を噛んだ。 毎日のわがままも、甘えてくる仕草も、頼ってくれることも。 ほかの令嬢の話をしたら機嫌が悪くなるのも、無理難題を言って困らせるのも、全部。 全部、全部、ほんとに、自分が好きだから。 そう気づくと、全身からしゅわしゅわした感情が込み上げてきて、じくじく広がって、もう、形がなくなるくらい、溶けてしまいそうだった。 ……すき、私はルシアン王子が好き。 これは親愛じゃなくて、恋愛感情で、そして 「ルシさま、」 ハロルドは手を伸ばした。 弱々しいけれど、ルシアンの首にまわして、引き寄せる。 ルシアンの匂いがする。甘くて、慣れ親しんだ、大好きな匂いだ。 ハロルドの行動に、ルシアンは目を丸くした。「え」と混乱した表情で、ハロルドを見つめる。 ーーーああ、可愛い。可愛い、ルシアン王子。 こんなにワガママで、甘えん坊で、 それでも自分の行動一つでこんなに困ってしまうその姿が。 たまらなく愛おしかった。 「わたしと、結婚して、くれますか」 こんなワガママ王子のそばにいてあげられるのは、きっと自分だけだろう。 ほかの誰にだってあげるもんか。隣国の王族だって、名家の令嬢だって、誰にだって、あげない。 ルシアンは口をぽかんと開けて、くしゃっと顔を歪ませて、ハロルドを強く抱きしめた。 「するっ、する。ハルと結婚する」 「はい」 「ハルじゃなきゃやだ。ハルがいい。ハルと一緒がいい」 腕の力が強い。その強さに息が苦しくなったけれど、ハロルドは幸福感に包まれていた。 立派に育ったルシアン王子の背に手を回して、自分も強く抱きしめる。ずっと近くで見てきた背中だ。 ふたりは近くで見つめ合って、キスをする。ついばむようなキスから、次第に舌を絡ませて、深く交わる。 熱くなる。頬が、耳が、唇が、熱を持って、切なくなる。愛しさが込み上げてくる。 繋がったままの下半身が、ずん、と重くなる。 ハロルドは「ひゃあっ」と高い嬌声を上げた。 ゆさゆさと、緩やかな動きで、律動が再開される。 「あっ、あっ、あっ、まっ、まって、ルシさま」 「ごめん、待てない。ハルがかわいすぎる」 「やんっ、ああっ、あっ」 ぱん、ぱん、と、乾いた音が響く。 甘い衝撃に、ハロルドは身体をビクビクと震わせた。 自身の中に埋まる雄はむくむくと大きくなる。奥で摩擦を感じて、ルシアン王子の身体にしがみつく。は、は、と、荒い呼吸を繰り返した。 ぐいん、と、最奥を強く穿たれて、ハロルドはついに、びゅるる、と白濁を飛ばした。 中がきゅうっと締まり、ルシアン王子のペニスがびくっと反応する。そして、勢いよく、ハロルドの中に、自らの精液をたっぷりと注いだ。 「おはよう、ハル」 目が覚めると、つやつやしたルシアン王子がハロルドを見下ろしていた。 ハロルドはぼーっとする頭で思い返す。 ベッドはぐちゃぐちゃで、自分の髪もぼさぼさで、シャツも、燕尾服も皺だらけで、なにより、下半身がずっしりと重い。 ……あの行為は夢でも何でもなかった。 ハロルドは尊敬する主人の前で淫らに乱れ、どろどろになったことを恥じた。 なにより………取り返しのつかないことをしてしまった気がする。 「………殿下、あの」 「ルシって呼んでよ」 「ルシ様………。あ、あの、さ、さきほどは」 申し訳ありませんでした、と続く言葉は、ルシアン王子がハルの唇を塞いだことによって消えた。 ちゅ、と軽くリップ音を立ててキスされる。 「かわいかったよ、ハル」 「あ、…………え、」 「ねえ、俺と結婚するって言ったの。覚えてるよね?」 ルシアン王子はハロルドの顔に手を添える。両手で、優しく包み込むように。 じっくりと瞳を見つめられ、逸らすなんて許さないとばかりに。 「…………はい」 ハロルドは恐る恐る答えた。 ルシアンは目をぱっと輝かせた。 「よかった! 絶対だよ。絶対結婚するからね」 「え、あ、あの、本気、で」 「早速国会を開かないとね。早く結婚の準備しないと」 「え、ま、まってください、ルシ様」 「なあに?」 ルシアンはきらりと輝いた顔で首を傾げる。自分のしていることが至極当然と言うばかりに。 ………本気だったのか、とハロルドは内心冷や汗をかく。 自分のせいで国が変わろうとしているーーーそう考えると、なんだか恐ろしくなって、「ひえっ」と声を零してしまいそうになったけれど。 「安心して。絶対ハルを幸せにするからね」 力強い瞳で微笑まれると、その不安もどこかに消えてしまった。 これほどに頼もしく、凜々しく、格好いい王子は、初めてだった。 ーーールシアン王子は、立派に成長された。 ハロルドは胸がきゅうっと締め付けられた。 嬉しいような、むず痒いような、そわそわするような。 じわじわと幸せが全身を包んで、ハロルドは小さく頷いた。 そして、ルシアンは国会を開き、ハロルドとの結婚を言い渡した。 動揺する貴族もいれば「まあそうだろうな」と笑う貴族もいた。反対するものはいなかった。いや、ルシアン王子の圧力の前では、言えなかったというのが正しい。 国王や女王も、「ハロルドならいいか」と微笑んでいた。 いいのかよ! と内心ハロルドはツッコミを入れそうになったが、だんだんと埋まる外堀にもう逃げられないと悟った。 ……逃げるつもりも、ないけれど。 そうしてふたりは無事に結婚し、幸せな生活を送った。

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