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最終話 もう、ぐちゃぐちゃにして、旦那様
びちゃ、びちゃ、ぬちゃ、ぬちゃ。
どろりとした粘性の音が、薄暗い部屋に静かに響いている。
九条くんは後ろから、僕の孔をゆっくりとほぐす。
ボディーローションを纏った太い指が、ナカの粘膜を優しく刺激した。
僕はもう、ほとんど涙目で、熱くて、きもちくて、きゅうっと布団を握り締めていた。
背後で九条くんの荒い吐息が響く。
視線をじっくり感じて、体温が上がる。
あっ、あっ、と、甘い声が零れるのを、九条くんは聞き逃さない。僕の反応が強くなったら、重点的にじっくりと攻める。
そんなことをずっと繰り返されて、全身はとろとろだった。
「んんぁっ、あっ、ああっ、くじょう、くんっ」
「……どうした、陽向」
このままじゃ溶けちゃう。
もう指は三本も入ってるし、もどかしいし、切ない。
振り返って九条くんを見上げる。そして、後ろ手で九条くんの立派なペニスに触れた。
「ちょうだいっ……! もうっ、もういれてよぉっ……」
涙目で懇願した。
多分顔は真っ赤で、だらしなくとろけてる。
九条くんは喉仏を上下させた。瞳孔がぎらりと光る。
そのままゆっくり、自身の雄を僕の孔にぴたりとつけた。
あ、くる。
期待に胸が高鳴る。それだけで「んっ、」とうわずった声が零れた。
「いれる、ぞ」
「うんっ、はやくっ、きてっ!」
ずずず、とゆっくりと入ってくる。
ナカの粘膜がぐちゃぐちゃっ、と刺激される。
途端に、僕は背中を反らして、思いっきりイってしまった。
ふかふかの布団に白い精液が飛ぶ。
恥ずかしい、と思う間もなく、九条くんは後ろからがつんと僕を突き上げた。
「あっ、ああっ、あんっ、あっ、」
「陽向っ、陽向……っ」
九条くんは我を忘れたように穿つ。
立派な雄が、激しい音を立ててナカを擦る。
僕は、もう、イったばっかなのに、とろとろになっちゃって、頭が真っ白だった。
がつん、がつんと、全身で九条くんは僕を求めた。
僕の腰を掴む手は強い。荒い呼吸は、獣のようで。
僕はお尻だけを高く上げて、情けない嬌声を上げていた。
上半身は力が抜けて、布団にべったりと倒れる。
律動に全身が揺れる。
勢いが激しい、つよい、だめになっちゃうーーー
「あんっ、あっ、あ、っんぁっ、」
九条くんは、僕の背中を後ろから抱きしめた。
全身が熱に包まれて、ナカがひくひくと締まった。
僕は、きっとこのαを、本能で求めている。
「ひなた、ひなたっ……」
「あっ、くじょうくんっ、あっ、ああっ、」
「出していいか……出したい、陽向のナカに、陽向っ」
「あぁっ、あんっ、だしてっ、ちょうだいっ!」
ナカの肉棒がびくんっと震える。
僕は一瞬息ができなくて、頭が真っ白になった。
ほしい、ほしい。
もう、それしか考えられない。
どちゅん、どちゅん、と強く穿たれる。
そして、九条くんは、びゅるるるっ、と思いっきり精液を注ぎ込んだ。
あつい、ナカが満たされる感覚がして、きゅうっと締まる。つられるように、僕も射精してしまった。
僕たちはぐったりした身体を横たえた。
ふかふかの布団は、汗やら精液で濡れていた。九条くんがティッシュで応急処置的に拭く。
「……陽向」
「え、あ……なに?」
「ありがとう……その、…………よ、よかった」
九条くんは頬を赤らめて、視線を逸らす。
手元はせわしなくティッシュを動かしていた。
「うん。僕も……きもちよかった」
「! そ、そうか。よかった……」
「僕……九条くんの……”妻”なんだよね」
へへ、とはにかむと、九条くんは僕に手を伸ばして、頬を撫でる。
「俺の妻だ」
その瞳はとろけるように甘くて、じっくりとした愛が込められてるみたいだった。
僕は胸元で手をぎゅっと握り締めて、口を開いた。
「ねえ、九条くん」
「どうした」
「……どうして、僕を選んだの?」
ずっと気になっていた。
プロポーズ当初に聞いてもはぐらかされた。
僕のことを好きなのは察したけどーーーでも、僕と九条くんは、ずっと会ってなかったのに。
小学校の頃は、むしろ嫌われてるとも思ったのに。
九条くんは目を丸くした。
「えっと」と小さく零して、それから、唇を噛む。
「ずっと、好きだった。……小学生の頃から」
「……え?」
「途中から……陽向が、俺を避けるようになって……。嫌われたのかもしれないって、思ってたんだが、……ずっと、好きで……諦められなくて、その」
「う、うそ!?」
僕は重い腰すら忘れて、がばっと起き上がる。
九条くんは恥ずかしそうに視線を下げていた。布団の端を心許なく掴んでいる。
「九条くんのほうが僕を嫌ってたんじゃないの?」
「え? いや、違う、けど」
「だ、だって……! 話しかけると睨むし、そっけないし、……」
当時の九条くんを思い返す。
教室で、プリントを渡しに話しかけた時や、一緒に帰ろうと誘ったとき。
九条くんはきりっとした顔で、ぎろっと睨んで、ぷいっと顔を背けてーーーー
「……恥ずかしくて、陽向の顔が見れなかった」
九条くんは、顔を真っ赤にして、うつむいていた。
そう、十数年前と同じように。
ーーーまじか。
僕はぽかんと口を開けてしまった。
なんだか、結婚を持ちかけられたときより、衝撃かもしれない。
だって、憧れで、かっこよくて、淡い初恋すら抱いていた、九条くんが……
ずっと僕のことを好き?
とたんに、ぶわっと体温が上がって、顔が熱くなった。
どくどく、ばくばく、心臓がうるさい。
込み上げてくる熱が止まらない。うまく言葉にならない。
え、あ、どうしよう、どうしよう。
胸元で拳を握り締めて、逸る心臓を必死に押さえた。
「……陽向?」
「えっ!? あっ、はい! なに!?」
九条くんは僕を心配そうに見つめる。
その瞳が、小学校の頃の九条くんとも重なった。
確かに、九条くんは無愛想だったけど、僕を見るときは、熱心というか、光っていたというか……。
そっか、あれは……僕を好きだったんだ。
今になって腑に落ちて、でもその分の止まっていた感情が、ぶわっと襲いかかってくる。
「……九条くん、」
「どうした」
「わ、分かりづらいよっ! もぉ~~~~っ!」
突然真っ赤になって叫びだした僕を、九条くんはあたふたしてなだめる。「すまない」と繰り返すけど、意味はよく分かってないと思う。
「僕も九条くんが好きだったんだよ!!」
僕は勢いよく叫んだ。
九条くんは口をぽかんと開けて、固まってしまった。
「僕だって、九条くんが憧れで、初恋で……でも、睨んでくるから、嫌われたのかと思ってたの!」
「……え」
「それで話しかけづらくなっただけ! ほんとはっ! 好きだったっ!」
肩で息をして、まくしたてる。
今まで封印していた恋心が一気に爆発してしまった。
九条くんは固まったまま、あ、と言葉にならない声を零す。脳内で必死に情報を処理してるんだろうなって顔だ。
僕はぷいっと膨れて、顔を逸らした。
途端に九条くんは、僕を勢いよく抱きしめた。
「えっと……陽向は、おれが、すき、だった……?」
「そう」
「……え……あ……、うん……? そう、か」
抱きしめながらも、まだ脳内の処理は終わってないみたいで。短い言葉だけが壊れたコンピューターみたいに出力される。
九条くんの顔をじっと見る。
赤くなって、恥ずかしそうで、驚いている。
僕は頬をゆるめた。
すごい財閥の御曹司で、イケメンで、エリートなのに。
僕の前では、こうして壊れちゃうんだから。
「ずっと好きだったよ、司」
にこりと微笑みかける。
九条くんーーーいや、司は、びくりと肩を弾ませた。
だって、もう、僕も”九条”だ。
僕は九条司の妻なんだから。
鳩が豆鉄砲を食ったような顔で、司はどぎまぎとする。
その端正で可愛らしい表情が、たまらなく愛おしくて。
僕は司に、ちゅっと軽いキスをする。
司は、肩をふるわせて、壊れそうなほどに抱きしめてきた。
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