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第1話

その世界では、第二性が人生を大きく左右していた。 アルファ、ベータ、オメガ。そして――運命の番。 王都の名門貴族に生まれたアルファの青年、レオニスと、同じく名家に連なるオメガの青年、フィン。 二人は物心つく前からの幼馴染で、初めて発情期を迎えた夜に互いが番であることを知った。 だがそれは、「運命の番」ではなかった。 それでも二人は愛し合った。 運命でなくとも、魂が引き寄せられるように自然で、温かく、疑いようのない想いだった。 フィンは知っていた。 運命の番同士から生まれる子は、魔力・知性・身体能力、すべてにおいて優秀で、国にとっても家にとっても“価値がある”とされることを。 そして―― 自分が、レオニスの子を身籠もっていることも。 そんなある日、レオニスの前に現れた。 彼の運命の番が。 フィンは何も言わなかった。 レオニスに確認することも、引き止めることもせず、ただ静かに理解してしまったのだ。 ――これは、自分が身を引くべき物語なのだと。 レオニスは名家の跡取り。 運命の番と結ばれ、その子を持つことこそが“正しい未来”。 自分の腹の中の命が、どれほど愛おしくても。 フィンは姿を消した。 ⸻ 一方その頃。 レオニスと、彼の運命の番とされた青年・セシルは、互いに戸惑っていた。 「……君には、愛している人がいるだろう」 「あなたも、でしょう」 二人はすぐに気づいたのだ。 運命という絆があっても、心は別の場所にあることに。 さらに、セシルは告げた。 「僕は……愛する人との子を、すでに身籠もっています文字文字文字」 驚きの沈黙の後、二人は話し合った。 運命に縛られるのではなく、友人として関係を築こうと。 誰も不幸にならないために。 それが、最善だと信じて。 だが―― フィンは、それを知らなかった。 ⸻ 「……フィンが、いなくなった?」 レオニスが真実を知らされたのは、両親からだった。 運命の番が現れたことを知り、 自ら身を引き、 何も告げずに姿を消したこと。 そして―― フィンが、すでに彼の子を身籠もっていた可能性。 「そんな……俺は、選んだ覚えなんて……!」 膝から崩れ落ちるレオニスの脳裏に、幼い頃からの記憶が溢れる。 笑い合った日々。 番として誓った夜。 運命ではなくても、確かにあった愛。 「運命なんて……!」 その叫びは、誰にも届かなかった。 フィンは今も知らない。 自分が消えたことで、誰も幸せになっていないことを。 そして、運命よりも先に結ばれた愛が、 まだ終わっていないことを。 ――物語は、ここから再び動き出す。

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