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🎼Extra Lesson《君を見つけた日6》◆

「ぁッ、あッぁ、あ、ンあぁッ! 待っ、ひ、ッぅあ! 仁っ! 仁……っ! 待ってぇッ……お、ッきいぃ……!」  気付いた時には奏の視界の先は壁だった。  後ろから覆い被さるように奏を貫く仁の体の下で、抑えることの出来ない嬌声を垂れ流す。  浴槽の縁にしがみつき滑らないよう必死に膝で床を蹴るだけで、他にできることはなかった。 「奏、ッ奏、は、ぁ、ッ可愛い……可愛い、俺の奏……! クッソ締まる……っ」  熱に浮かされたような仁の言葉と吐息が奏の頭の中をどろどろに溶かしていくようだった。  少し乱雑な言葉遣いも腰を鷲掴む両手も叩き付けられる腰も、全てが堪らない快楽を生んだ。 「きもぢぃッ……あぁッ、あッ、ぅ、ァあッ! だめっ、だめ、だ、めぇッ! きもち、くてッ死んじゃうぅ……っ!」 「ははっ……気持ち良いな……? ちっせぇ穴で一生懸命咥えて可愛い……ッ」  腹の奥まで仁自身で埋められたかと思えば一気に引き抜かれ、張り出た先端で容赦なく前立腺を抉られる。チカチカと星が瞬くような強烈な刺激に、奏はもう何度気を遣ったか覚えてなかった。 「奏、ッ、悪い、出る……!」  唸るように呟く仁の声に朦朧とする意識の中で奏は何度も頷く。  より一層、叩き付けるような腰の動きが速まった。暴れる湯が音を立てる中で背中にのし掛かる仁の体がビクッと跳ねる。 「しゅ、ご……ッこれ、おなかァ、ッあ、ァッ、そんなぐぽぐぽしたらっ……あぁァあッ!」  意味を為さない言葉を頼りなく繰り返す奏の中を占めていたものが、ずるり、と引き抜かれた瞬間、背中に熱い飛沫が飛び散った。  そして、それと同時にぼちゃん、と何かが湯の中に落ちる音がする。 「ッはー……はー……っ……頭バカになりそ……ん? えっ!? かっ、奏ーッ!」  完全にのぼせて目をまわしている奏がぷかり、と浮いていた。 ◇ 「水!」 「はい、ここに」 「だから言ったでしょ! ベッド行こって!」 「はい、すみません」 「どうすんの、せっかくのおうちデートなのに……足立たないじゃん」 「はい、俺が全部します」 「……ぎゅーも?」 「はい、ぎゅーも…………えっ?」  慌てた仁が奏を風呂から回収したあと、体中の水分を拭き取りベッドに寝かせて氷嚢を運び、甲斐甲斐しく──仁のせいなのだから、当然ではあるが──世話をして十数分。  ようやく目を覚ました奏が頬を膨らませて怒っているのだとアピールしていた。  奏に言われるがまま口元に水を運び、真っ赤に火照った頬を冷まさんと仰ぐ仁に、奏の視線が突き刺さる。 「仁、ぎゅーは? ……早く」 「っ! はい! すぐに!」  ぷく、と膨らんだままの頬が怒っているわけではなく、照れ臭さに因るものだと気付いた仁はパッと瞳を輝かせる。そのまま、そろり、とベッドに潜り込むと小さな生き物を扱うかのように柔く抱き締めた。 「んっ……ふふ……仁、暑い。ふふ……!」 「ふ……可愛い、ご満足いただけました?」 「全然。まだぎゅってしてて」  仰せのままに、と笑みを孕んだ仁の声が奏の鼓膜を震わせる。さっきまでの小さな眉間の皺が嘘かと思うほど嬉しそうに腕の中に潜り込む奏には、仁も眦が和らぐ。  そして情事の疲労感と初めての「おうちデート」で興奮していた奏の瞼がとろん、と溶け始めた。 「奏、体……痛いとこない?」 「ん……腰がだるくてくすぐったい……おなかがうずうずする……」 「ッう、ぐぅ……!」 「?」  とろとろの声で答える奏の破壊力たるや。これ以上(さか)って本当に怒らせてしまうわけにはいかないと、仁はカエルの潰れたような音だけ上げて耐える。  まだ濡れた奏の髪に鼻先を埋めると、自分と同じ匂いがする。この擽ったさを「幸せ」と呼ぶのだろうか──仁はこっそりと口角を持ち上げた。 「はー……可愛い、好き」 「何なの、いきなり……まだ怒ってるんだけど?」 「怒ってても可愛いよ。笑ってても可愛いけど。泣いてるとこも可愛い」 「そこは『泣かせない』とかじゃないんだ」  うつらうつらと船を漕ぎ出した奏が息苦しくないよう仁が少し体を離すと、離れた分だけ奏が腕の中に戻ってくる。  あまりの愛おしさに足の先まで痺れるような感覚だった。胸の奥で鳴る音が何の〝色〟か、仁には視なくても分かる。 「泣いてもいいよ、俺の前でだけなら。泣けなかったあの時の子の分までな」 「あの時? あー……コンクールの時のこと?」 「うん。一番キラキラしてたあの子が、一番悔しい思いをしてたのに……泣くことも許されなかったんだから。だから泣いてもいい。今度こそ俺がぎゅーってしとく」  言葉通り奏を抱き竦める仁の脳裏に、幼い奏が浮かぶ。  くしゃりと歪められた顔は泣いているようにも笑っているようにも見えた、あの子。  二位だった嬉しさと、一位になれなかった悔しさと、母親に拒絶された悲しさとが混ざって吐露する方法を知らなかった、あの子。 「そんでさ、泣き止むまで俺がちゅーするから。そしたら笑ってよ、いつもみたいに可愛い顔で」  空気を静かに震わせる甘い仁の声が子守唄代わりになったのか、奏からの返事は寝息に代わっていた。 「奏? ……寝ちゃったか」  頬をまだ上気させたまま双眸を伏せる顔は、あどけなさの残る安心し切ったものだった。  起こさないよう、そっと身動(みじろ)いで部屋の照明を落とす。  そして橙色に沈む部屋の中で、仁は眠る奏の額に口付けた。 「……おやすみ、俺の初恋」 《完》

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