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エピローグ:ハリンストン兄弟の偏愛
学校の図書館にリジャス・ハリンストンが入ってきた。
彼の姿を見つけた女生徒は皆、頬を赤らめた。
紙とインクの匂いが充満するこの場所に、清らかな風が吹き込んだ。
背の高さを利用して机の群れに目をやる。
しかしリジャスは探し人の姿を見つけられない。
「リジャス」
そんな中、アイザック・ハリンストンが左手を挙げながら弟に呼びかけた。
彼の手には抉られたような痛々しい痕がある。
「兄さん」
ようやく兄の姿を見つけたリジャスは、嬉しそうに彼の元まで歩いて行った。
同時にアイザックは広げていた参考書を鞄に仕舞った。
「ここにいると思った」
「来ると思った」
ハリンストン兄弟は微笑み合う。
血の繋がりはないはずなのに、彼らの顔立ちはよく似ていた。
「帰ろうか」
「うん、帰ろう」
アイザックは弟と共に図書室を後にする。
途中で女生徒とすれ違う。
カーラの親友だ。
カーラが借りていた本を返すため、代わりに図書館まで来たのだった。
ハリンストン兄弟の姿を目の端で捉えた彼女は振り返った。
図書館で二人とすれ違った時、カーラが顔を青ざめさせたのを思い出したから。
「なぁリジャス。帰ったらポーカーでもしないか」
「また?」
「負けっぱなしは嫌だからな。今日こそ勝ってやる」
――なあんだ。別に何もないじゃないの。
他愛ない話をしている兄弟の背中を見送りながら、女生徒は少し興ざめした。
***
その日の深夜。
アイザックは自室のベッドにうつ伏せになっていた。
「っ……は」
クッションを抱きながら、片方の手で後孔に触れている。
不慣れな手つきで解しながら、時折小さく息を吐く。
アイザックの瞳は悲しげにとろけている。
ほんのり色づいた頬の上を涙が流れてゆく。
どうして泣いているのか、アイザック自身分からなかった。
「ん、っ」
指を引き抜くと同時に呻いた。
下腹部に違和感を覚えながら、アイザックはランプすら持たずに廊下へ出る。
アイザックとリジャス。
リジャスとアイザック。
俺たちは、兄弟だ。
血の繋がりはないけれど、二人の間に結ばれた絆は何者にも打ち砕かれない。
だから、付き合ってやる。
俺の全部をお前に捧げてやる。
そうすればお前はもう、誰も傷付けずに済むんだろう?
「なぁ……リジャス」
弟の自室の扉をノックする。
まるで待ち合わせでもしていたように、リジャスはすぐにドアを開けてくれた。
「誘いに、来たんだ」
弟を見上げながらアイザックは微笑みかけた。
「おいで」
深海の瞳を愛おしげに揺らすリジャスに手を取られる。
ハリンストン兄弟を迎えた部屋の扉が、静かに閉じられた。
(了)
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