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第22話 恋愛に興味持ってくれればいいんだけど

「ったく……! 本借りてんのに文字読めねぇのかよ、クソ……」 今日、俺は図書館での雑務を任されていた。 今は返却された本を棚に戻す作業をしている。 そのときに気づくのだが、全然違うジャンルの棚に別の本が入っていることがある。 気づいたときに元に戻しておかないと、本を探して三千里する羽目になるのだ。 ぶつぶつ文句を言いながら本を戻していく。 その隙に、必要そうな情報をサッと読み取るのも忘れない。 (あった。”ネクロマンシーの技術”、だ) あたりをちらりと確認して、本をぱらりとめくった。 ”ネクロマンサー”は死体を操る魔術師の一種。 現代でも数は少ないが残っており、地方の一部貴族がネクロマンシーの技術を持っている。 遺体に残った魔素を通じて操る。 遺体の魔素は徐々に低下するため、死後十年経った遺体は操れなくなる。 操れる範囲はネクロマンサーの魔力量に寄り、一度に数十人を操ったケースもあるらしい。 (……操れる”死者”の能力は、死後経過時間に左右される。つまり、亡くなってすぐの死体だったら、生者を操るのとあまり変わらない) 魔力が高い人間の遺体を用意して、操れば。 ”白の間”まで魔素を運ぶことも可能だ。 「エルマ?」 「うわっ! びっくりしたぁ!」 突然声をかけられて振り返ると、クヴァールが立っていた。 手元の本をバラバラと落としてしまい、慌てて拾う。クヴァールも申し訳なさそうに手伝ってくれた。 「驚かせてごめん。見かけたからびっくりして」 「あ、いえ、こちらこそ……。今日は図書館の雑用なんですよ」 「忙しいね。色々やってるんだ」 はい、と笑いながら本を受け取る。 「クヴァールさんは?」 「僕も何か借りようかなって。最近あんまり本読めてなかったから」 「へぇ、いいですね。どんなの読むんですか」 「うーん、気晴らしにしたいからなぁ。小難しいのはちょっと。……あ」 クヴァールは近くの本棚から一冊の本を取り出す。 「これ、続き出てたんだ。これにしよっかな」 「なんですか、それ」 「”明けない夜に恋をした”……っていう、恋愛小説」 表紙を見せてもらって、「おお」と呟いた。 夜空の装丁が美しい小説だった。 「一時期ベストセラーになって……エルマは読んだことある?」 「ないです。あんまり恋愛小説って読まなくて」 「そっか。興味ないかな」 「あー……うーん、どっちかっていうと、冒険小説のほうが好きですね」 あはは、と笑うと、クヴァール「エルマらしいね」とくすくすと笑った。子どもっぽいって言われたみたいだ。 「どんな話なんですか?」 「貴族と使用人の恋の話。お互いのことを思ってるのに、立場とかいろいろあって。すれ違っちゃうんだ。身分差がまたね、リアルで切ないんだよ」 「………へえ」 胸の奥がずきりと痛んだ。 貴族と平民。なんだか自分にも重なる気がした。 「気になります。俺も読んでみようかな」 「じゃあ一巻貸してあげるよ。明日、医務室に来て」 「ありがとうございます」 笑顔でお礼を言うと、クヴァールは「よかった」とはにかんでいた。 忙しいのに小説読む時間あるかな、とか、思っちゃうところはあるけど。任務で息が詰まってたのもあるし。気晴らしにはなるかもしれない。 (ギルバートのことも諦めたいし。恋愛小説ってのはいい手段かも) 唇をきゅっと噛む。 こんな時にも考えちゃうのが、諦められてない証拠だ。 「これでエルマも、恋愛に興味を持ってくれればいいんだけど」 そう微笑むクヴァールは、俺を優しく見つめていた。 「え?」 「いや、なんでもない」 どういうこと、と尋ねようとするも、途端にクヴァールは「お仕事がんばって」と、その場を去っていった。

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