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第101話 陽一サイド<勝負の夜・コンサート>

颯太は宴会場でリハーサルをしていたが、17時から2時間は休憩の時間にしてもらった。 急なダンスでそのまま本番をやると、颯太は後半が息切れをする。 やり通したとしても、あとの体調の維持が大変だ。 3日間も連続しているので、お願いすると即OKだった。 颯太の体力がないのは皆分かっているな。 開演は20時からだ。 19時半にアメリカンバーに行った。 達也さんや旦那さんはもう来ていて、軽いドリンクやつまみを取っていた。 颯太には水や軽いドリンクを頼んだ。 招待の予約席はまだ誰も来ていなかった。 どうなんだろう? 誰も来ないままにテーブルが開いたままでやるのは悔しいな。 照明や音楽のスタッフはもう定位置についていた。 90分だから、前のコンサートと全く同じだ。 動きが小さくなるだけだ。 バーの中はすでに満席だった。 あとから来た人は入れないけれど、入り口付近やテラス席からはドアを開いたままなので聞こえる。 スタッフはテラス席に椅子を調達してきて、立っている人を案内していた。 もう入り口には入れない人たちが溜まっていた。 皆さんは突然のショーを楽しみにしているんだね。 秘書の三谷さんが、「プリントが足りないのでコピーしてきます」と走っていた。 日本から、衣装まで持ってきてくれていた。 この前に来ていたやつだけど、やはり衣装は目立つ。 そして、時間になった。 挨拶は颯太が前に出て、英語で話した。 それをアテンドがフランス語に訳していく。 「こんばんは、僕は柚音(ゆおん)です。そしてこちらは達也です。僕たちは日本の歌手です。今宵はモナコで皆さんに歌を届けることを大変うれしく思います。最初は達也が一人で歌います。ではどうぞごゆっくりお楽しみください」 いつの間にか、招待した予約席が埋まっていた。 バックの音楽もセットされていた。 達也君の美しいしっとりとした歌声で始まった。 彼のヒット曲だよね。 観客が息を呑んで聴き入っているのが分かる。 最初は達也君が40分ほど一人で歌い、踊りも入れる。 この時にダンサーの2名はしっかりフォローして、バックで踊りを入れていた。 そしてバックコーラスまでも入れていた。 達也君の声は本当に美しいし、歌がうまい。 ダンスもしっかりしている……。 「颯太が休んでも、達也君だけでも立派にステージをこなせる」 桐生社長の言葉を思い出す。 やがて、達也君が終わると、颯太はまた会話を入れる。 「ありがとうございました。では、次は僕が歌います。 この曲はテレビドラマの主題歌になって、大変ヒットした曲です。 ここでサプライズです。 実はこの曲は、うちの音楽事務所の理事である「Natsu」とデュエットなので、呼びたいと思います。 「Natsuさん。どうぞ」 えー?とばかり驚いている彼だが、ニヤッとして舞台に上がった。 彼はスタッフとしてスーツを着ている。 観客も「なんで?」という目で見ていた。 なんで事務所の理事が歌うの?って疑問だね。 でも出てきたのは長身で超イケメンの夏さんだ。 舞台に出ても違和感なし。 「では曲名は『風音』です。聞いてください」 最初のパートは颯太が歌う。 ♪夕暮れの風が 頬をかすめて 遠くで誰かの声が 揺れていた ♬ やがてサビに入ると、夏さんも一緒に歌う。 ♪風が運んだ 君の声が 胸の奥で そっと触れた 指じゃなくて 音で触れた あの日の風音(かざね)が まだ消えない~♬ 2番のパートは、夏さんが一人、美しい高音で歌う。 ♪夜風が少し 冷たくなって 隣にいる声だけが あたたかい 高く澄んだ君の音が 影を照らし 静かな世界に ひとつ灯りがともる ♬ また二人で大サビをデュエットで歌う。 結局、観客はうっとりと聞き惚れて大拍手だよ。 ……全く、あれで医者なんだから、才能が有り過ぎる。 ああ、俺はでくの坊だ……悔しい。 次は颯太のヒット曲で「透明な恋」が続く。 その後は、曲は<My heart will go on>――映画『タイタニック』のテーマだ。 この曲はヨーロッパの人々にも特別な思いがあるようだ。 すごく感情移入して聴いている。 静かに終わると、今度は軽いリズムの軽快な曲を歌った。 ダンサーも出てきた。 そして終わると、今度は達也君が登場。全員でやるんだね。 「では、皆で歌って踊ります。『Dynamite』」 もうここで観客が爆発。 外国人ってノリが良すぎる。 足踏みするし、皆手拍子で一緒に歌っちゃってるよ。 日本とやっぱり違うな。後ろの方なんか踊っている人がいた。 「ではここで5分、プロジェクションマッピングをお楽しみください」 颯太が挨拶をすると、サーッと引き上げていった。 ここでミュージカル曲のために、着替えるんだよね。 その間にマッピングが会場全体を埋め尽くす。 観客は初めて見る人が多いのだろうか。 「うんまあ~」なんて感じ?(笑)。 映像を手で触ろうとする人多数。 皆で手を出しているからおかしい。 こっちもクスクス笑ってしまう。 あ、招待席! 何気に見ると、全席埋まっているではないか! そしてやはり同じように手で映像を掴ろうとしていた。笑える。 そして映像が色々と変わっている間に、ミュージカル「アラジン」の世界になった。 横からささっと登場した颯太と達也君。 颯太がマイクを握る。 「次はミュージカルのアラジンから、『A Whole New World』です」 マッピングの幻想的な光が流れる中、達也君の歌から始まる。 そしてかぶせるように颯太が歌う。 デュエットが映える曲だ。 この二人のコンビは最高かもな。 「では二人で歌います、ミュージカルから『Beauty And The Beast』」 すぐ颯太のハミングで柔らかく始まった。 メロディーも美しいけれど、二人の声はどうしてこんなにきれいにハモるんだろう。 本当に聞き惚れた。 そして終わった。 颯太と達也君が並んで挨拶をする。 「皆さん、今日はゆっくり聴いてくださって、本当にありがとうございました。 お楽しみいただけたでしょうか?」 「イエ~イ」と拍手喝采だった。 「ありがとうございます。 このプログラムはあと二日間続きますので、また是非お越しください。Merci beaucoup」 最後のありがとうは達也君も声を揃えた。 そして二人は手を振りながら出口から出ていった……んだけど、お約束か? 拍手は鳴りやまず、また二人が出てきた。 「では、アンコール曲は『SING/シング』です」 ピアノはロニー先生だ。凄い! 颯太と達也君が交互に歌ったり一緒に歌ったりだ。 軽快で明るい曲だね。 そしてまた拍手喝采の中を無事に終えることができた。 はあ~。もう息絶えた……聴くだけで体力を消耗してしまった。 松永さんを見ると、あれ?いない。 出口を見ると、達也君を抱きしめていた。 思わず立って、くそーっと思った瞬間、颯太が胸に飛び込んできた。 抱きしめた! 「颯太、本当にすごかったよ!」 「えへへへ」いつもの笑いだ。

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