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第1話

楽しみなはずの昼休みを前にした四時限目。 担任である中峰一希(なかみね かずき)の教科である数学のテストが今正に返されている最中なのだ。 二日前に行ったこのテストだが、数学が何よりも苦手な加藤碧(かとう あおい)はテストの点数にハラハラしていた。 もしも三十点以下なら補習を受けることになる。 それだけはどうしても避けたかった。 「加藤碧」 「ぁ、はい」 名前を呼ばれ、ドキドキしながら教卓の前へと向かう。 テストの点数も気になるが、碧のドキドキはそれだけではなかった。 今目の前に居る担任は碧の想い人。 決して結ばれることはないとわかっていても、近くに居るだけで心臓はうるさいくらいに脈打った。 「ほら、二十三点。補習決定だな」 言われて渡されたテストを見れば、赤い文字で大きく『二十三』という数字が書かれていて、碧は一気に項垂れる。 どうしても避けたかった補習が決定してしまったのだから無理もない。 「ま、今回の補習は俺だから、みっちり教えてやる」 「え? 先生が?」 あまりにも意外な言葉に碧は眼を見開いた。 いくら一希が数学担当でも、必ず補習が一希になるとは限らない。 現に今まで一希の補習など一度もなかった。 だから、碧にとって補習はほんとの地獄そのもの。 教える相手が変わるだけで、授業と補習ではやる気の度合いも違っていた。 好きな相手が教える授業ですらテストはボロボロなのに、それが他の相手になれば結果は目に見えている。

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