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第1話

これからは甘えてなんていられない──。 そう決意したのは田舎から引っ越してきた日だった。 これからは弟と二人の生活が始まる。 自分がしっかりしなくてはいけないのだ。 「信太ー、さっさと準備しろよ?」 朝食の支度をしながら、天海屋宏太(あまみや こうた)は弟の信太(しんた)に保育園の支度をさせる。 寝起きの信太は服を着替えるのも一苦労のようで、見兼ねた宏太はキッチンから信太の元へと移動した。 「ほら、服着るのにいつまで手間取ってるんだよ?」 「…だって…いつもはママが手伝ってくれるんだもん」 「ぁ…そうだったんだ」 正直、こっちに引っ越して来る前は信太のことに関心を示したことはほとんどなかったのだ。 田舎では両親が居て、信太の面倒や家のことは母親が全て担っていた。 宏太は学校に行ったり、バイトしたり、友達と遊んだり、と普通の高校生と何ら変わりない生活だった。 でも、今は普通の高校生というわけにはいかない。 母親の代わりもしないといけないのだ。 信太の支度を手伝い、二人揃って食卓につく。 「いただきます」 少し元気のない信太の声。 それはきっと、新しい保育園に対しての不安からだろう。 「信太、保育園楽しみか?」 「わかんない…知らない子ばっかだし…」 「そりゃそうか。確かに知らない子の中に入っていくのは怖いもんな。でもな、転校生ってのはある意味最高なんだぞ?」 「最高? なんで?」 知らない土地で知らない人たちの中に飛び込んでいくことのどこが最高なのか? 信太は兄の言葉に目を見開いた。 「だってさ、クラスの全員が転校生に何かしらの興味持つじゃん? どこから来たのか、とか前の学校のこととかさ。特に注目されるのは最初の挨拶の時。そこでみんながこいつと仲良くなりたいって思うことを言えば、絶対クラスの人気者だな! 下手したら前の保育園より友達できるかもしれないぞ?」 「そっか! 新しいお友達たくさんできるんだよね!」 「そうそう! まぁ、信太なら間違いなく友達たくさんできるからさ。自信持って行ってこい!」 「うん! ありがと、にいに!」 さっきまで不安気だった表情はどこへやら。 いつも通りの元気な声を聞いて、宏太は改めて信太を愛しいと思った。 それは初めて産まれたばかりの信太を見て、兄としての責任感を感じた時に似ているようだった。

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