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第8話
「ほんとですよ。にいにも小さい頃は飲めなかったくせに、って言われて、もうどうしても飲んでくれないんです」
困り果てた表情で信太を見れば、ベッドに潜り込んで薬を拒んでいた。
流石に大悟でも無理だろう、と思っていたら、得意げな笑みを浮かべ、信太に近づく。
「信太くん、薬飲まないの?」
「だって…苦いもん」
「そっか。じゃあ仕方ないね。でも、薬飲まないと治らないから、明日病院で注射して治してもらおうね」
「ちゅ…うしゃ?」
「うん。このまま何もしないと悪くなっちゃうからね」
「……飲む」
流石は先生と言ったところだろうか。
あれだけ嫌がっていた薬をあっさりの飲んでしまった。
その後は薬が効いてきたのか、静かに寝息を立て始め、宏太達は後片付けに取り掛かった。
「大悟先生、ありがとうございます。先生が来てくれなかったら、今も飲ませようと必死だったと思いますよ」
「…ごめん、宏太くん」
「え?」
さっきまでの和やかな雰囲気からは一変し、大悟が真剣な眼差しを向けるので、つい宏太も緊張してしまう。
──急にどうしたんだろう?
そう思うより先に、体が何か温かい物に包まれた。
一瞬何が起きたのかわからなかったが、すぐに抱き締められているのだと気づく。
「あ、の…大悟先生?」
「ごめん。僕…宏太くんが……。普段から気になる子だとは思ってた。でも、さっき…初めて見る宏太くんがたくさんあって…あぁ、家ではこんな感じなのか、とか普段はここで信太くんとどんな風に過ごしてるんだろう、とか…」
自分は信太の先生で、宏太は保護者。
こんなことを言ってしまったら、この信頼関係に傷がついてしまうかもしれない。
それでも、言葉を止めることはできなかった。
「きっと…気になるのは…宏太くんが好きだから。信太くんのお兄さんだからとか、仲良く話せる保護者だからとか…そんなんじゃなくて…」
普段はこんなにも言葉に困ることはないのに、何をどう伝えたらいいのかわからず、情けないくらいに言葉が下手くそだ。
顔は見えないが、腕の中の宏太はきっと困惑しているだろう。
正直、大悟自身も今自分が何を言っているのかわからないぐらい混乱していた。
──好きなんだ。
結局、最後に出てきた言葉は何の飾り気もないストレートな気持ちだった。
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