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第56話
そんな宏太を見て、大悟はその頬にそっと手を伸ばす。
流れ落ちる涙を指の腹で拭いながら、愛おしそうに目を細めた。
「ほんと、宏太は泣き虫だな」
「泣き虫、なんかじゃないよ」
泣き虫という言葉に反応し、宏太は強がるようにそう呟いた。
たった数ヶ月前までは誰かの前で泣くなんてできなかったのに、気づけば泣き虫と言われる程までに涙が自然と出てくるようになっていた。
それは紛れもなく大悟のお陰だろう。
彼に出会ってから、一人で頑張らなくてもいいんだ、と思えるようになってきた。
大悟のお陰で変われたのだ、と思えば、泣き虫と言われるのも悪くはないかな、とほんの少しだけ思ってしまう。
「泣き虫だよ。ずっと人前で泣く事ができなかった子が僕の前ではこうして素直に泣いてる。だから、僕の前でだけは泣き虫で居ていいんだよ」
「っ…大悟。俺は人に甘えたりとか頼ったりするのが苦手だから…こんな風に人前で泣くなんて有り得ないって思ってた。でも、大悟と居ると、昔みたいに素直になれる気がする。俺が泣き虫で居られるのは大悟だけだよ」
それはまるで忘れていた感情を取り戻したような感覚だ。
そんな事を思いながら、頬に触れる大悟の手から伝わるぬくもりを噛み締めていると、大悟に囁くような声で名前を呼ばれた。
そして、そっと唇が重ねられ、宏太もそれに応えるように、大悟の背中にそっと手を伸ばした──。
END
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