72 / 72
第72話 最終回 達也サイド<シャンパン>
「立花先生とおっしゃいますと?」と透真さんが尋ねる。
「あ、名刺をお渡ししますね。
青山の佐久間総合病院の院長ですが、今はミツワ未来財団の仕事をしています」
「へえ~、そうなんですか。では私も名刺を」
透真さんが差し出した名刺を受け取り、立花先生が「うわっ」と声を上げた。
「え、なになに?」と颯太さんが覗き込む。
「あのね、この方、あの車の会社の副社長さんなんだって!」
「ええーー! すご~い!」
碧人君の声が響き渡る。
もう、声が大きいよ!
その時、「あれ、達也じゃないか! お前元気だったのか? 心配したんだぞ」
ゲンさんが大声で駆け寄ってきた。
ステラのメンバーも全員集まってくる。
「お前、そ、その首……どうしたんだよ?」とリョウさんが怪訝そうにする。
俺は思わずニヤッとしてしまう。
「はい、では紹介します。俺が結婚した、松永透真さんです」
皆が一斉に「ええーー!? もう結婚したのか!?」と驚きの声を上げた。
「早くないか?」とゲンさん。
「はい、そうなんですが……運命の人と出会っちゃったから」
一瞬、その場に沈黙が走る。
「運命ってあるのか? どうやってわかったんだよ?」と不思議がるゲンさんに、透真さんが優しく答えてくれた。
「デビュー曲の動画を見て直感したし、最初に会った時に匂いで分かりました」
またしても、しーんとなってしまう。
「運命ってあるんだねえ……へえ~、それは幸せだなあ」とゲンさんがしみじみと言った。
「はい、お陰様で」
そんな話をしていると、理事と桐生社長が前に立ち、パンパンと手を叩いた。
「はい、注目! 今日はファンミーティング、大成功でした。
ステラのメンバーも忙しかったと思うけど、素晴らしいステージだったよ。
ファンの方も皆さん大満足の様子だったね。
では成功を祝して乾杯しましょうか?
今日はね、すごいよ。
達也のご主人の松永透真さんから、シャンパンの差し入れが10本届きました!」
「おおーーーっ! ありがとうございます!」
あちこちから歓声と拍手が上がる。
「じゃあ、今夜は透真さんから乾杯の音頭をお願いしましょうか?」と桐生社長。
シャンパンが行き渡り、理事が合図を送る。
皆が透真さんを見た。
「では僭越ですが、ステラビートの皆さん、ファンミーティングの成功おめでとうございます。
お疲れ様でした。カンパーイ!」
「カンパーイ!」
プラカップが掲げられる。
最高だ。すごく嬉しい。
俺も透真さんと二人で改めて乾杯し、シャンパンを口にした。
喉にシュワシュワと心地よく通っていく。
あ~、おいしい!
「達也君、あっという間に幸せになれたね。良かったねえ」と颯太さん。
「はい、颯太さんのお陰です。今後ともよろしくお願いします」
「あ、ミツワの広報スタッフも来ているから、旦那さんを紹介してあげて」
颯太さんが広報スタッフたちを手招きした。
……あれ、7人もやって来た。
「広報は人数が増えたんですか?」
「そうなのよ、すごいでしょう?
達也君のファングッズやファン対応は、
私たちが財団の仕事として引き受けますからね」と山下さんが微笑む。
「そうなんですねえ。はい、どうぞよろしくお願いします」
「あ、それと紹介します。俺の旦那さんで、松永透真さんです」
「松永です。よろしくお願いします。達也がいつもお世話になっています」
透真さんが、どこか余裕のある笑みを浮かべている。
「あのう、なんかすごいチョーカーですが、それは撮影してもいいものですか?
今後は取材などもあるかと思いますが」と山下さん。
透真さんが俺を見る。
「俺はいいけど、透真さんはどう?」
「全然かまわないよ。あ、名刺をお渡ししておきますね」
広報の山下さんがそれを受け取り、じっと眺めた。
「え、え……と、どうやって知り合ったんですか?
車のCMに出演したのはわかっているのですが、まさかの展開なんですか?
その辺を全然知らないので、達也さんのHPやインスタにも出していいでしょうか?
ぜひ取材をさせていただきたいです。
それと、どこまで公表していいのかのガイドラインもお願いします」
すると、颯太さんが口を開いた。
「待って待って、松永さん、いきなりですみませんねえ。
この人たちは根性の人たちなので、なかなか引かないんですよ。
もしお時間があれば、長いお付き合いになると思うので、
彼女たちに少しだけ時間を作っていただけないでしょうか?」
透真さんを見ると、ふふふと笑って少し照れていた。
「はい、いいですよ」
「あのう、ご自宅でくつろぐ写真などを撮らせていただけると、
大変ありがたいんですが……」と山下さん。
「はい、分かりました。どうぞいらしてください」
あ~あ、つかまっちゃったねえ。
俺、知らないよ~!
完結
ともだちにシェアしよう!

