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10.いつからだっけ?
ずっと普通にしゃべってるから気づかなかったけど、俺以外はみんな名前で呼び合ってる気がする。
俺は癖でとっきーとげんちゃんって呼んでるけど、二人は俺のことを下の名前の蒼樹 って呼んでるもんな。
「そういえばいつから二人に名前で呼ばれるようになったんだっけ?」
「さあー? 俺は別に意識してないから、適当ー」
「俺は中学の時くらいだった気もするが、正確には覚えてないな」
とっきーは確実にはぐらかしてるからおいといて、げんちゃんの言うことが正しいなら結構前からか。
わざとらしく呼ばれなきゃ呼び名はなんでも構わないけど、一度気になると……もっと気になってくる。
「なんで今その話を引っ張ったわけ? 俺があおちゃんって言って、からかったから?」
「それもあるけど、なーんか気になってさ。特に、とっきーの態度が」
俺が二人を見ると、げんちゃんが無言でとっきーへ視線を流していく。
とっきーは、俺? って面倒くさそうに頬杖をつきながら俺の顔を眺めてきた。
「名前で呼ぶ意味はあるんだけど、蒼樹には言わない」
「はあ? あれこれ俺に内緒なことが多くないか?」
「気を悪くさせたら悪い。だが、悪いことじゃないのは俺も保証する」
げんちゃんにも言われると、これ以上、何も言えなくなる。
でも保証するって……どういうこと?
最近、俺には内緒の流れが増えて来ているのが謎なんだよな。
俺だけ蚊帳の外なのが、良い意味のサプライズならいいんだけどさ。
とっきーとげんちゃんの間にだけ俺には言えないことがあるのって、少しだけもやっとする。
「そこまで言うなら俺も追及はしないけどさ。俺が色々頼みごとしたから、俺の言うことが面倒だったら別に……」
寂しくなって、まるで子どもみたいなことを言ってしまう。
すると、とっきーとげんちゃんは打ち合わせなしでグッと体を前に押し出してきた。
「それはない!」
「絶対ない!」
俺の言い分は、二人から思い切り否定された。
でも……これじゃあ、ますます分からない。
俺に腹を立ててるっていうなら、とっきーは我慢しなさそうだから気にしすぎなのか?
それに、げんちゃんが悪いことじゃないって言ってるもんな。
げんちゃんは嘘をつかないから、信用できる。
とっきーは口が上手いから、俺じゃ太刀打ちできないことが多々あるからな。
困ったらげんちゃんにお願いして教えてもらった方がよさそうだ。
「分かった。ならいいよ。ただ、俺は別に可愛くない。というか、誰からも言われたことない」
「それはさー。蒼樹が気づいてないだけで、昔から女子は蒼樹くん可愛いーって騒いでたんだって。大学の時もそうだった」
「そうだな。蒼樹は可愛い」
「いやいや、げんちゃんまでおかしくなってる。どうせ言われるならカッコイイとか言われたい……って。え、俺大学の時そんなこと言われてた?」
この話は収集つかなくなりそうだから、諦めることにした。
俺がモテてたら、今頃彼女がいるっての。女の子が俺に話しかけてくることなんて……とっきー関連以外、ほぼない。
俺は話の流れを断ち切るように、二杯目のコーヒーを淹れに行こうと席を立つ。
「この話はおしまいでいいよ。とにかく、今日もありがとな」
「自分で言っておいて適当に終わらせるのかい! って、蒼樹はいつも適当か。喫茶店経営はさ、俺らがついてるんだから好きにやってみろって。本当にダメな時は俺が止める」
「そうだな。難しいことは良く分からないが、蒼樹の店だから蒼樹がやりたいようにやってほしい」
「さすが! 俺の幼なじみは優しいよなー」
二人とも俺に優しくしてくれる。
それが嬉しくて自然と笑顔になると、なぜか二人にそっぽを向かれた。
俺が笑うと変なのか? まあ、細かいことは気にしても仕方ないって分かった。
俺はもう二人の態度は気にしないと決めて、カウンターへ向かうことにした。
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