9 / 14
9.三人一緒なのは素直に嬉しい
サバランは改めてげんちゃんに考えてもらうことにして、後は定番メニューの作り方を一緒に確認していく。
最初は俺たちだけで店を回すから、まずはリニューアルの宣伝は控えめにしてご近所さん狙いだ。
俺は主に飲み物と軽食担当でげんちゃんが料理とスイーツ全般、接客と雑務はとっきーの担当だ。
と言っても、喫茶店のマスター兼オーナーは俺だ。最終的に俺が全部チェックしてまとめなくっちゃいけない。
店舗経営は初めてだし、じいちゃんの見よう見まねでやってみるしかない。
「従来のメニューは変えなくてもいいだろ。簡単なものはそのまま残した方がレトロ感あっていいんじゃない?」
「全部が凝ったものにする必要はないと思う。限定メニューも数量限定でやってみるつもりだがどうだろうか」
「うん。それでいいよ。飲み物はとっきーにも手伝ってもらうかもしれないけど、コーヒーと紅茶は俺が淹れるつもりだし。二人には俺の足りない部分をカバーしてほしい」
まさか仕事まで一緒とは思ってなかったけど、俺はこの三人でいるときが昔から心地良かったんだ。
だから、げんちゃんがまた俺たちのそばへ戻ってきてくれて嬉しい。
げんちゃんは調理師免許を取るために専門学校へ行って、俺ととっきーとは離れていたからな。
俺ととっきーは同じ大学だったから顔を合わせることもあったけど、昔みたいにげんちゃんも含めた三人で長い時間いるのは久しぶりだ。
お互いに忙しくしていたから、三人一緒にっていうのは月一に会う約束をするのがやっとだったんだよな。
「これでげんちゃんともまた一緒だな」
「ああ。俺も蒼樹 と一緒に働けるのは嬉しい」
「俺もいること忘れてんだろ? あーあ、あれだけ大学で助けてあげたってのになー」
とっきーは俺が淹れたブレンドコーヒーを飲みながら、相変わらず不服そうにしてる。
気づくと確かに助けてくれていたけど、俺もとっきーのお世話をしてたんだよな。
とっきーはいいヤツだけどケンカっぱやい時があるから誰かとぶつかることもあるし、女の子たちは直接話しかけづらいからって俺に貢ぎ物を渡してくれって押し付けてくることも多かった。
女の子たちともめているときも、とっきーと仲良しだってことでよく呼ばれて、俺が間に入って仲裁してたんだよな。
その時の面倒くささを思い出して、自然とため息がでてきた。
「なんだよ。蒼樹のその顔。玄暉 には、げんちゃーんってニコニコする癖に。可愛くねぇな」
「男に可愛いとか思われても嬉しくないからどうでもいいけど、とっきーのせいで俺、面倒な目にあってきたんだよな。でも、俺が素直に感情を出せるのはとっきーの前くらいだから。いいよね?」
「確かに。蒼樹が怒るのは鷺羽 の前だけだ。俺にも怒ったりしない」
げんちゃんの言うとおりなんだよな。
とっきーには自分の感情をストレートにぶつけやすい。
げんちゃんには感情をぶつけるというよりか受け止めてもらう感じだから、同じ幼なじみでも接し方が少し違う。
「まあ、俺に言いたいことをまんま言えるのは蒼樹と玄暉くらいか。子どもっぽいあおちゃんも可愛いなあー。甘えてるんだろ?」
とっきーがニヤニヤしながら肩を抱き寄せてくるので、イラっとしてぺしっと腕を払ってやる。
「子どもの時のあだ名で呼ぶなって! で、褒めてないだろ? 可愛いってバカにしてるんだよな」
「蒼樹は俺たちのことずっとあだ名で呼んでるのに? なぁ、玄暉」
げんちゃんも頷いて、ブラックのコーヒーを飲みながら俺を見てくる。
そういえば俺はずっと呼び名を変えてなかったな。
二人は俺のことを、いつから名前で呼ぶようになったんだろう?
ともだちにシェアしよう!

