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16.コーヒーのお味は?
自治会長さんが顔をしかめたらどうしようかと思ったけど、どうやら驚いているみたいだ。
マズイものは入れてないはずだけど、美味しくなかったか?
「自治会長さん、もしかしてコーヒー失敗してましたか?」
俺は不安になってきて、思わず切り出してしまう。
俺の不安げな一言と表情が伝わったのか、自治会長さんは慌てて手を振りだした。
「いや……いやいや! その逆だよ、ただっちゃんのコーヒーそのまんまだよ! 蒼樹 君はただっちゃんが生きてた頃からコーヒーを淹れるのが上手だと思っていたが……いやはや」
「そう言っていただけると、俺も嬉しいです。じいちゃんに教わっていたことがきちんとできていたなら、店を続けていく自信になります」
自治会長さんからのストレートな誉め言葉に嬉しくなって、俺も笑うことができた。
じいちゃんは流れるような手つきだったし、コーヒーの味も何度淹れようが決して変わらなかったから本当にすごかったんだよな。
豆の配分もこの味わいを出すまでには何度も試行錯誤を繰り返したって言っていたし、じいちゃんの代だけで終わらせてしまうのはもったいないって思ってたんだ。
少しでもいろんな人に飲んでもらいたい。
じいちゃんの美味しいコーヒーを広く伝えていきたい。
その思いが強くて、この店を継いだからな。
「ただっちゃんの味をこの店でまた味わうことができるとは思わなかったよ」
「喜んでもらえて良かったです。いつでもコーヒーを飲みに来てくださいね」
「ああ。これは食事も期待がもてるな」
「ええ。期待してください」
自治会長さんもまた通ってくれそうだし、固定客がついてくれるのはありがたい。
じいちゃんに比べたらまだまだだけど、常連さんが俺のことを認めて褒めてくれるのは嬉しいし心強い。
じいちゃんを思い出してもらえるなら、俺も本望だ。
話していると、とっきーがモーニングを運んできてくれた。
「お待たせしました。トーストとサラダのセットです」
「ありがとな。おお、これも昔食べてたまんまだ」
トーストは簡単に焼いただけで、側にジャムとバターを添えてある。
サラダは分かりやすいグリーンサラダで、キャベツの千切りとちぎったレタスにミニトマトが入ってる。
ドレッシングは自家製で、これは和風ドレッシング風だ。
「ふむ。やはり朝はこれに限るな」
「簡単に食べられるものは俺たちにとってもありがたいことですから。店を回す人数が少なくて済むし。マスターもコーヒーを淹れることに集中できますからね」
とっきーが流れるように説明すると、自治会長さんもわははと笑いながらそうだなと頷いてくれる。
「じいちゃんは全部一人でこなしてたかと思うと、改めて尊敬します」
「ははは! 蒼樹君は本当にじいちゃん子だな。でもな、ただっちゃんも俺には適当だったんだぞ。焦げたパンでも食えるだろなんて言ってな。だから、こんなにきれいに整ったモーニングじゃなかったよ」
じいちゃんは誰の手も借りることなく、接客から調理まで全部一人でやってたんだよな。
俺もじいちゃんみたいにおしゃべりしながら、美味しいコーヒーが淹れられるように頑張らないとな。
「そう力まなくとも、蒼樹君の淹れてくれたコーヒーは本当においしい。本当にただっちゃんが目の前にいるみたいだよ。ぜひ、また寄らせてもらうよ」
「ありがとうございます」
たくさん褒めてもらえると、俺も安心だ。
俺自身、心のどこかで自信が持てずにいたけど……じいちゃんの味を知ってくれている人にここまで言ってもらえるのなら。
俺たちの新生プラムコレクトも、受け入れてもらえるかもしれないな。
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