20 / 44
20.俺なりにイケメンマスターを演じてみる
次の日、新規で来てくれた女性のお客さんに積極的に話しかけてみる作戦を実行した。
あんまり得意じゃないけど、笑顔で飲み物を進めたり多少格好つけてコーヒーを作ったりできることは全部試してイケメンアピールをしてみる。
内心何やってんだろうって思いながらしてるけど、これもお店のためだ。
正直、イケメンだと思われる自信は全くない。
「マスターさんって若いのに、色々詳しいんですね」
「ありがとうございます。祖父の受け売りですが、喜んでもらえたなら良かったです」
美味しいコーヒーの淹れ方を教えると、女性二人組から感謝された。
げんちゃんの作ったデザートも気に入ってくれたみたいで、楽しそうにチョコレートパフェを食べている。
喜んでもらえるのは本当に嬉しいし、げんちゃんのおかげでファンの人が増えてくれるのは大歓迎だ。
「サイトの写真の通り、レトロ可愛い」
「ね? 店員さんもカッコイイし」
小声で話しているんだろうけど、話し声が俺にも丸聞こえだから気恥ずかしくなる。
金髪のショートの女性は店員さんって言ってるから、カッコイイっていうのはとっきーのことなんだろうな。
でもげんちゃんもたまに裏から出て来て料理を運んでくれるから、げんちゃんの可能性もあるか。
イケメンの定義ってなんだろうなと心の中で思案していると女性からの視線を感じ、慌てて笑顔を浮かべなおす。
「でも、私はマスターさん推し! 笑顔が優しい癒し系」
「それは嬉しいですね。ありがとうございます」
焦げ茶の髪のショートボブの女性が、しっかりと俺を見ながら推し宣言をしてくれた。
こういうところで、しっかりイケメンアピールしておかないといけないんだよな。
とっきーが前にそんなことを語ってた気がする。
うまく笑えてるといいんだけど、彼女は嬉しそうにしてくれているからうまくいったみたいだ。
それにしても、癒し系か……やっぱりとっきーやげんちゃんとは違うよなあ、俺。
もしかして、小動物っぽいとか? そういうことか?
「カウンターって緊張すると思ってたんですけど、こんな近くで色々お話できるのいいよねー」
「うん! 私、通っちゃうかも」
「いつでもお待ちしてます。ぜひお友達にも宣伝してくださいね」
推してもらえるならそれでも構わない。ここは追撃だと、宣伝をお願いしておくのも忘れない。
言いながら、もう一度ニッコリと笑いかける。
接客業は、常に微笑んでおかないとな。
仕事としては作り笑顔だろうが、間違っていないはずだ。
「はい! 学校のみんなに宣伝します」
「雰囲気いいし、食べ物と飲み物も美味しいし。来て良かったー」
ここに鏡がなくて良かった。
俺、確実にイケメン風キャラを作ってるんだろうなぁ。
本当はもっと自然に接したいんだけど、とっきーとげんちゃんに可愛いって言われるのも心外だしな。
はぁ……これでお客さんからも可愛いって言われたら、諦めて可愛い路線で売り込んだ方がいいかもしれない。
売り込むっていうのも変な話だけど、まずは良い印象を持ってもらって話題にしてもらうことが先決だ。
常連さんも大切にしながら、新しいお客さん確保のために更に頑張らないとな。
ともだちにシェアしよう!

