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19.イケメンに会えるレトロ喫茶?
初日以降、常連さんだけじゃなく新規のお客さんも少しずつ増えてきた。
どうやらとっきーの宣伝効果が出てきたらしい。
しかも、流行り出した理由がイケメンに会えるレトロ喫茶……って。
とっきーとげんちゃんは分かるけど、俺は別にイケメンじゃないんだけどな。
普通だし、特に特徴もないのになあ。
とっきーは、多少大げさな方がいいしそういうことにしておけって言うんだけどなんだか気が引ける。
「どうしたんだよ、蒼樹 。またぼーっとして」
「え? ああ、ごめん。考え事してた」
「考え事って割にはアホっぽい顔してたけど」
「失礼だな。確かにそこまで真剣に悩んでたわけじゃないけど」
お客さんが少し途切れた時間帯、裏にあるバックヤードへ引っ込んで軽食を食べながら休憩していた。
お店を閉めた訳じゃないけど、今日は天気も悪いせいか客足が伸びていない。
だから、順番に休憩を取ってしまうことにした。
普段も合間に休憩を入れたりするけど、その時はお互いに仕事をカバーしながら少しずつ休憩を取っていた。
呼ばれればすぐに表に出るし、何せ回しているのは三人だけだ。
いくら小さなレトロ喫茶と言っても、お客様第一なのは当たり前だもんな。
「いや、なんかイケメンってくくりにされたのが……ちょっと気になってて」
「それまだ気にしてたのか? ブサイクって言われるよりイケメンって言われた方がいいだろ」
「んー……お店的にはアリかもしれないけどさ。とっきーやげんちゃんは分かるけど、俺は違うし」
サンドイッチをかじりながら息を吐き出して顔を上げると、俺の顔を覗いていたらしいげんちゃんの顔が目の前にあって驚いてしまう。
「うわっ!」
「驚かせたか? 悪い」
ビックリした拍子にバランスを崩して椅子から落ちそうになったけど、げんちゃんが支えてくれたから何とか堪えて体勢を戻す。
座り直してから、げんちゃんにありがとうとお礼を言った。
「大丈夫。今、とっきーと話してたんだよ。俺は別にイケメンじゃないって」
げんちゃんは俺の言い分を聞くと、そのまま無言でとっきーに視線を流して説明を求めた。
「なあ、寡黙なイケメンって評判のげんちゃんも言ってやれって。蒼樹もカッコイイってさ」
とっきーがげんちゃんを軽くこぶしで小突くと、げんちゃんは小さく頷く。
「そうだな。蒼樹はカッコイイし可愛いぞ」
「はあ? いや、だからー……男に可愛いって何?」
「あー……それ言っちゃう? 俺はあえて言わないようにしてたのに」
とっきーが額に手を当ててため息を吐いた。
どういうこと? とっきーも俺のこと可愛いとか思ってたって訳?
「励ますつもりがうまくできなかったか。でも、蒼樹は蒼樹だ」
「なーんか納得いくようないかないような……そりゃ、俺は体つきも貧弱だし取柄もないからな。二人と比べたら……カッコイイではなく、可愛いになるってことか」
「ネガティブになるなって。玄暉 の言い方は下手だったけど、誉め言葉のつもりだったんだよ。多分」
誉め言葉なのか?
でも可愛いって……それって、俺が頼りないってことだよな。
二人にはいっつも助けられてばっかりだし、俺もたまには男らしくしないとダメか。
「分かった。じゃあ、俺もイケメンだってところを見せる」
「え? どういうこと?」
「俺もやればできるってこと。見てろよ、二人とも」
げんちゃんは不安そうな顔をしてるし、とっきーは意味が分からないって顔してるけど……俺は決めた。
次に来た新規の女性のお客さんに、俺のできるサービスを詰め込んで店の常連さんになってもらおう。
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