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44.紳士待ちでそわそわ

 とっきーとげんちゃんとの話し合いで謎の紳士待ちをすることになったんだけど、一度来店して以来、しばらく姿を見かけなかった。  特定のお客さんを待つなんて不思議な感じだけど、どうしても色々と気になるんだよな。  今日も朝からカウンターの中で少しそわそわしながら、コーヒーを準備する。 「蒼樹(あおい)、例のお客様は来たか?」 「来てないよ。あれ、とっきー顔を見てなかったっけ?」 「見てない。接客したのはふーみんだろ? 俺はあの時、女の子たちの相手してたし」 「言い方がなんかチャラいなあ……。それは置いておいて。分かった。紳士が来店したら教えるよ」  小声で会話を交わしてから、また準備に戻る。  今日は客の入りが少ないし、今はカウンター前の席にも誰も座っていない。  テーブル席にちらほらいるくらいだから、のんびりとしたスタートだ。  淹れ終わったコーヒーをとっきーに運んでもらいながら、次の紅茶に取り掛かる。   「天気もイマイチだし、今日は客足も伸びないかな」  雨が降ったりやんだりしている変な天気で雨宿りするほどの雨じゃないから、こういう日はどちらかというと客足は伸びないんだよな。  気を取り直して作業に戻ると、来店を知らせるベルの音がカランカランと鳴り響いた。 「いらっしゃいませ」  とっきーが気づいて入口へ向かう。  俺も視線で追うと、スーツ姿の男性の姿が見えた。  おひとり様みたいだしもしかしてと思っていると、とっきーがお客様をカウンターに案内してくれた。 「いらっしゃいませ」 「永瀬君、こんにちは。まずはコーヒーをいただけるかな」  噂の紳士が来てくれたので、自然とテンションがあがってしまう。  案内してくれたとっきーに目線で合図すると、小さく頷いたあとこっそりとウィンクしてきた。  雰囲気で察してはいたんだろうけど、俺の合図で噂の紳士だと確信したみたいだ。   「北條様、お待ちしておりました。どちらのコーヒーをお淹れしましょうか」 「そうだな……この(あお)をもらおう」 「かしこまりました」  今日は俺の名前から名付けられたオリジナルコーヒーを注文してくれた。  俺が作業している間も、やっぱりじっと見られている気がする。  目の前で作業しているから、物珍しいのかな? 「やはりいい香りだな」 「コーヒーの香りはお好きですか?」 「そうだな。落ち着く香りだ」  香りを(たしな)む仕草も洗練されているから、お客様だというのに見つめてしまう。  じろじろ見るのは良くないことだけど、紳士の正体も気になるし……少しでもヒントが欲しいんだよね。  俺の視線はさすがに気づかれてしまい、逆に俺の方が見つめられてしまった。 「そんなに見られると気恥ずかしいな」 「す、すみません。お客様の洗練された雰囲気についみとれてしまって」  素直な気持ちを伝えると、目の前の紳士はふわりと優しく笑ってくれた。  笑う仕草まで様になるって……大人の男性の魅力、おそるべしってやつかもしれない。

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