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壁と戦うBLアイドル 05

「コメント欄はしっかり読んでおいた方がいいぞ、マリン」 「そうなのか、でも誹謗中傷が怖くてな」 「コメント欄を読むと、読者の好きなものが分かる。つまり次はその同人誌を描けばいい」 「分かった、できるだけ読むようにするよ。ヴァン」  確かにコメント欄には次回の同人誌の希望が書かれていることが多かった。だから俺はヴァンと一緒にコメントを呼んで次回の同人誌に何を描くか決めていった。 「あー、あー、皆の者。コメントを呼んだ限り。俺とマリンの両片想いもの、ようじとジュンの百合もの、虎之介総受けものが希望されているようだ。もちろんこれらは同人誌にするとしてカップリングに他に意見はないか?」 「はい、僕は夢漫画ものがいいと思うな」 「ジュン、その確信は?」 「読者も僕たちと恋愛したいと思うの、だから夢漫画がいいかなって」 「一理ある、五人分の夢漫画を描いてもらおうか」 「あ~ん、それ大変だぁ。やめとけばよかったかな」  こうして次に書く同人誌は決まった。あとはようじとジュンの努力にかかっている。動画配信も続けていた、再生数は少しずつだが伸びていった。ヴァンは新しい歌とダンスを考えるのに忙しそうだった。俺もせめて衣装がそれらしく見えるように頑張って縫った。虎之介は撮影を頑張っていた。俺達はもう十曲も歌ってダンスした。そうしてヴァンから合格を貰えた映像だけが動画配信された。最後に注意事項を伝えるようになってファンとの接触はかなり減った。俺達は普段はなるべく一緒にいた、特に俺はようじといることが多かった。身長が190センチある俺がいるとようじのファンは近づいてこないからだ。そうしてあるオリジナル限定の同人誌即売会に行った時のことだった。 「壁だと!?」  ヴァンが驚いて声をあげた。俺達にはその意味が分からなくて、ただ今日は壁を背にしてお客さんと接するのかと思った。 「皆の者、まさかオリジナル限定の同人誌即売会とはいえ、壁になるなんて思いもしなかった。今日は全員で客の相手をするぞ、いつものようにブースの前をうろつく暇はない!!」  その後、ヴァンの言ったとおり同人誌即売会がはじめると客が押しかけてきた。俺達はその対応でてんてこ舞いになった。 「新刊の夢、五冊ください」 「マリヴァンを一冊ください」 「写真とらせてください」 「新刊を全て一冊ずつとグッズをください」 「新しく出た本だけください」  俺達は時々は写真撮影に応じながら、終わればすぐにブースに戻ってお客の相手をした。壁とはすさまじいものだった。途中で写真撮影に応じられなくなり、ヴァンが写真撮影は売り切れ後と書いた紙を吊るした。飛ぶように同人誌が売れていった。グッズも同じようなものだった。そうして持って来たものが全て売り切れると、皆でお客さんと写真撮影した。いろんな人がいた。 「マリンさん、これからも頑張ってください」 「ヴァンとマリンさんで写真とらせてください」 「あの曲の終わりのポーズしてください」 「五人そろって写真とらせてください」 「ようじくんとジュンちゃんの写真とらせてください」 「虎之介と写真が撮りたいです」 「動画いつも見てます」  写真撮影が終わる頃、つまりイベントが終わる頃にはもうくたくただった。ダンボールを潰して指定の場所に捨てて売上金だけを持って帰った。今日は相当な大黒字だった。ヴァンから貰えた給料も高額で何を買おうかと胸が躍った。特にお金が好きな虎之介は喜んでいた。俺達はくたくたにはなったがそれなりに満足感を味わった。 「疲れたけど楽しかったな、皆」 「そうだなマリン。俺は稼げて嬉しいぜ」 「同人誌にQRコードを入れたのは正解だったな。また新しい曲をつくらねば」 「ほんと、疲れたけど楽しかった」 「もう、ようじったらマジ天使」  ヴァンは壁になることは滅多にあることじゃない、今日は偶々有名なサークルが出なかったのだろうと言った。壁とはすさまじいところだった、当分そこには当たらないでほしいものだ。俺は全国の同人誌を作っているサークルから言えば罰当たりなことを考えていた。壁になるのは本当はそのサークルの名誉なのだ。ある程度、実力がついたという証なのだった。 「ところで皆の者、こんな誘いをうけたのだが」  ヴァンが言いだした誘いとはこうだった。とある出版社が俺達の同人誌を出版したいというものだった。ヴァンが言うにはそうすれば印税が入ってくる半面、今までよりもっと多くの人に知られることになる。つまり過激なファンが増えるかもしれないということだった。だから皆でよく考えるようにと言われた。俺はその会社の名刺を見て引き受けてもいいんじゃないかと思った。でもようじは嫌そうだった。ようじのファンは彼を子ども扱いして気軽に触れてくることが多かった。 「それでどうする?」 「俺は賛成」 「俺も俺も賛成」 「僕は反対」 「ようじがそうなら僕も反対」  意見はちょうど真っ二つに分かれた。あとはヴァン次第だったが、ヴァンはしばらく考えたすえにこう言った。 「今回は断ろう、俺達が有名になればまたチャンスはくるさ」  こうして出版社からの依頼は断ることになった。ようじはホッとしていた。俺もようじの様子を見て、断ったヴァンは正解だなと思った。そうして俺達は次の同人誌即売会に向け、何を描くか相談をはじめた。動画のコメントを読んで人気があるものを描く予定だった。ただ今日はくたびれていたので結論が出なかった。明日は休んで明後日また話し合おうということになった。

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