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第12話
溜め息を吐き、視線を逸らしたのはエディセレンの方だった。
「サロディアン家を守ることは約束しよう。だが……何が起こったとしても、お前を捨ておくなんてことはしない。そもそも、これは俺が協力を頼んでいるんだ。お前の願いは決して図々しくなんかない」
「……」
マリアノワは彼からそんな言葉を言われると思っていなくて、キョトンとして目をパシパシさせる。
今まで、協力をしてくれと言ってきた貴族たちは皆、マリアノワが家族のことを願えば『図々しい』と言って嫌な顔をしていた。
彼らの願いに対して、マリアノワの願いは等しくはなかったらしい。
「図々しいと……思わない?」
「思わない。協力を要請したのは俺だ。それならばマリーの願いを叶えるのは俺の役目だ」
「……驚いた」
「何がだ」
マリアノワは少し悩んだあと、おずおずと口を開く。
「冷酷非道の噂があるエディが、こんなにも話が通じるとは思わなくて」
「冷酷非情……」
眉をひそめて少し不満気な顔をするエディセレンに、マリアノワは肩の力を抜いて笑う。
「ありがとう。今まで……こうして受け入れてくれる人はいなかった」
「……男爵家はそれほどまでに軽んじられる存在ではないだろう」
「……貴族の中では下級ですから」
「家格などどうでもいい。俺が買ったのはサロディアンの家柄ではなく、お前自身の知性と度胸だ。それも分からない貴族ともは阿呆の集まりだな」
その言葉と優しく力強い眼差しに、マリアノワの胸がドキリと音を立てた。
嬉しいのか、恥ずかしいのか。顔が熱くなってエディセレンの顔を見れない。
「マリー?」
「……と、とりあえず、やらなきゃいけないことが山ほどある!」
「? そうだな。色々と準備を進めなければ」
「まずは……潜入する時の衣装だな。我が家にはそういったものをいくつか用意しているんだが……」
しかし、目立たないように地味な物ばかり。公爵閣下が連れ歩くお気に入りはきっと、綺麗で豪華に着飾られているはず。
マリアノワはチラッとエディセレンを見た。
「それならば、俺がマリーに贈り物をするとしよう」
「え、贈り物?」
「そうだ。合理的だろう」
それならば間違いがない。
適当に見繕ったものより、エディセレンの好みを身につける方がずっと確かだ。
「では、それで」
「ああ。任せなさい」
小さく口角を上げたエディセレンに、マリーは少し落ち着きのない様子で頷いた。
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