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第75話 これから
「これからどうする? あの村へ帰る?」
砂浜を歩きながら問うと、そうだなあ、とヤンは苦い顔をしながら後ろ頭を掻いた。
「あそこは古術のやつらに見つかってるからなあ。また他のとこへ行くかな」
「一緒に、行っていい?」
そろっと尋ねたとたん、握った手がきゅっと握り返された。
「それ以外の選択肢あるの?」
この人には敵わない。はにかんでしまったがそこで気づいた。
ひとりの少女が浜辺で必死になにかを拾っていた。年のころはまだ七つほどだろうか。ずぶ濡れで両腕になにかを抱えた彼女に向かってシリルは走り出す。
「どうしたの」
驚いたように少女の目が見開かれる。彼女の腕の中にあったのは木材だった。
「おじいちゃんのお店、この海岸の端にあるの。でも波でずいぶん壊れちゃったから直さないと……」
そう言う彼女の腕の中のずっぷりと濡れた木々を見つめ、シリルは唇を噛む。この状態では建材として使えない。そもそもどの程度の修復が必要かもわからない。が、老人や少女には手に余る作業だろうと想像はつく。
「ヤン、俺」
見上げるとヤンがにやっと笑った。
「俺が家具職人だってお前、忘れてない?」
……みなまで言う前にそう言ってくれるこの人はやはりとても素敵だと思う。
彼に笑顔を返してからシリルはそうっと彼女の前に膝をついて、彼女の腕の中の木材に手を触れた。
「俺達が手伝うよ。お店まで案内してくれる?」
「いいの?」
少女の顔が輝く。その彼女と目を合わせ、シリルは頷いた。
もうアリスはいない。あのとき抱いた憎しみだって全部忘れたわけじゃない。でも膨れ上がった憎悪よりも、誰かの感謝の声を、笑顔を、振られた手の優しさを守りたいと思えた気持ちを今の自分は大切にしたい。
隣に立つこの人が好きと言ってくれた自分に恥じないために。
「おじいちゃーん!」
少女が叫ぶ。海岸線の先で手を振る人がいる。その人に向かって少女が走り出し、小さな足跡が道筋となって点々と刻まれた。
それを辿り、シリルは歩を踏み出す。彼とふたり、新たな足跡を砂へと記しながら。
……本編 了……
🐤🐤🐤
禁忌の契り。あなたの声。
ここまでお読みいただき、本当に、本当に!ありがとうございます!
ダークな世界観ですし、受け入れられないかも……と怯えながら投稿してまいりましたが、たくさんお読みいただいている……。めちゃくちゃうれしい(泣)
一応、本編はこちらで終了になりますが、実は番外編を公開予定でいます。
シリルとヤン、ふたりともまあまあ過酷な日々でございましたから、少しいちゃいちゃさせたい欲がこう……。
ですのでよろしければ近々この次ページ以降で公開予定の番外編もお越しいただけたら、とてもとてもうれしいです。
BLにもトレンドがあり、自作がトレンドからはずれていると思う気持ちもあります。
でもやはり書きたい気持ちは抑えられぬまま、今作も執筆いたしました。
もしこの作品が少しでもあなたの心に残ってくれたら、これ以上幸せなことはありません。
読んでくださる方がいてくれる、この幸せを抱きしめてまた頑張りたいと思います。
皆様、ありがとうございましたm(__)m 引き続き、番外編もどうぞよろしくお願いいたします🐤✨
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