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ピュアボーイ
「あ~それにしても……」
そう呟いて、天井を見上げる。そうしていないと、涙がこぼれ落ちそうやったから。
「しんどかったぁ」
今更ながらこの数週間の怒涛の日々を振り返る。好きでもない人との恋愛ごっこ。一つ間違えば、弟たちの幸せを壊してしまう。洸くんをどうにかして守らなければいけないと思ったことも、もとちゃんを傷つけてばかりいたことも、不甲斐ない自分を嘆いたりもした。
「……秀太にぃ、俺たちのこと守ってくれてありがとうね。大好き」
もとちゃんの頭を愛おしそうに撫でていた洸くんが、次に俺の元へやってきて後ろからぎゅっと抱きしめてくれた。作戦に参加してへんとはいえ、洸くんも少なからず、俺が洸くんのことを必死で守ろうとしてたのは何となく分かってくれてたんやな。
「秀太、意地悪なことしてごめんな? 俺も秀太のこと大好きや」
「俺も秀太さんのこと、もっともっと大好きになりました」
「僕はいまだに何が起こってたのかよく分かってないですけど、洸くんが大好きな人は大好きです」
弦と空くんが言ったあとに、オチのように新くんが笑わせてくれる。ほんまにこの子は。よう分からん状態でも、BARで男らしく助けてくれたのはこの子やからな。ほんま俺にとってもこの子は救世主やわ。
「僕も、この半月で秀太さんのこと、もっと好きになりました。元々、出張前も綺麗な方なので挨拶するたびにドキドキしてたんですけどね?」
「はぁ~!?!?!?」
俺らのやり取りを呆然と聞いていたもとちゃんが大きな声をあげる。いや、やっぱりか。たまに見せる俺に惚れてるような顔は、やっぱり演技やなかったんやな。
「ふふっ、なんかみんなに告白されて、今までのしんどかったの全部飛んでいってもうたわ」
見上げて我慢していた涙がポロリと落ちた。これはしんどかった涙やなくて、嬉し涙に変わった涙や。
「そうや! 初めて挨拶いった日に、兄貴、秀太さんのこと綺麗な女の人やと思ってて、めっちゃ興奮してたの思い出した!」
「そう、空に『どう見ても男の人やろ』ってツッコまれてな」
「うわ、陸さんの関西弁初めて聞いたかも」
「俺は、兄貴がずっと敬語なんが気持ち悪かった」
「ほんま? なんか仕事出来そうでかっこええやろ?」
穏やかな関西弁が、本当の陸さんの性格を表していて、自然と笑みが漏れた。
それにしても、ずっとショックを受けたまま、なんも喋らんこの可愛い幼馴染をどうしようか。
「……もとちゃん、配達してくれたんやろ? 仕事戻らんでええの?」
「は!? この状態で帰すってどんだけ鬼畜やねん」
やっと我を取り戻したもとちゃんと目を合わせて笑い合う。
「この流れで、もう一回告白してくれたら、返事するけど?」
全員からの告白に気をよくした俺は、冗談でそんなことを言う。ほんまは2人きりがいい。でも、こんな幸せな空気は読んどかな流石にあかんやんな。
「……いや、そういう大切な言葉は秀太にだけ、大事に伝えたい。それがたとえ、秀太の大切な人たちの前であってもや」
「……俺、もとちゃんのそういう男らしいとこ大好きやで?」
「っ!!」
俺の急な告白に、もとちゃんは目を丸くして時を止めた。その後、「それはあかんやろ」と顔を真っ赤にして両手のひらで隠している。ほんま、全員でニヤニヤすんのやめてくれ。こっちまで愛おしすぎて笑ってまうやろ。
「……じゃあ! お楽しみは後にして、買ってきたケーキ食べへん? 空が好きそうな美味しいのいっぱい買ってきたからなぁ」
陸さんが嬉しそうに、大量に入ったケーキの箱を開いてみんなに見せている。
「洸くんは4つね。あ! ホールの方がよかったかな?」と、空くんに見せる笑顔と同じように笑いかけている。「ありがとう陸さん!美味しそう!」とみんなが微笑み合う光景を見て、家族が増えたみたいで嬉しくなった。
「もとちゃん、こっちで一緒に食べよ」
大人数にテーブルを占拠されて、もとちゃんの手を引っ張ってソファに促す。待ちに待った2人時間や。照れたように隣に座るもとちゃんの顔を見て、幸せが隠せへん。
「秀太にぃ、もとちゃんお紅茶入れて来るから待っててね」
「うん、洸くんありがとう」
洸くんの気遣いに笑顔で返して、そっともとちゃんの手を握る。
「……それ、つけていってくれてたん?」
ふとネックレスに視線を落としたもとちゃんに笑顔で頷く。
「うん。これのせいで、敗北してんけどな?」
「敗北?」
「陸さんが男同士の恋愛の意味が分からんから、疑似恋愛して意味を教えてほしいって言われててん。そうしたら、弦と空くんの交際を認めるって。誰かにバレたら無かったことになるし、これも浮気判定されて、結局はあかんかった。でも、それでも、もとちゃんの気持ちを大事にしたかったんよ」
そう心のうちを明かすと、やっとホッとしたように笑って、俺にだけ聞こえる声でそっと呟いた。
「秀太、好き。……大好き」
「……俺も、もとちゃんが大好きや」
彼の頬を撫でると、またもとちゃんが恥ずかしそうに顔を赤くする。ほんま、金髪美女と遊びまくってた奴には思われへんな。こんなことですぐ赤くなって、意外とピュアボーイで可愛らしい。
「あ、えーっと、お紅茶どうぞぉ~」
「こっちはケーキです。どぉぞぉ~」
後ろから来た洸くんと新くんが、気を遣って少しおどけながら、目の前のテーブルにケーキとお紅茶を置いてくれた。
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