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拝啓、愛しのキミヘ。匿名だから許してください。

 大真(はるま)は、幼なじみの慧司(けいし)と登校しながら、いつもはない緊張感を抱いていた。  学校の門をくぐり昇降口がだんだんと近づいてくると、大真はズボンのポケットに手を入れたり、出したりを、不自然に繰り返す。  昇降口には、今日も朝から人が多かった。  大真は今日だけは、人の少ない時間に登校したかった。  でも、毎朝一緒に来ている慧司にそうお願いする勇気がなかった。  「なんで?」と、そう聞かれたら答えられないから。  自分たちの靴箱へと向かいながら、クラスメイトが近くにいないか、大真は気になってしかたがなかった。  あちこちからうるさいくらいに靴箱を閉める音が響いている。 (絶対俺たちの靴箱にも誰かいるじゃん……!)  大真は、さっきまでポケットに出し入れしていた手を、肩にかけている鞄へと移し、肩紐をぎゅうっと握りしめた。  反射的に細めてしまった目をおそるおそる開いたと同時に、靴箱の前に着く。  幸い、大真たち以外には、まだ誰もいなかった。 (はあ……、良かった……!)  それだけのことで嬉しくなった大真は、一瞬だけ緊張感を忘れてしまった。安堵から思わず「ふ〜!」と息が漏れたけれど、自分より先にいる慧司の背中を見て、すぐにこれからのことを思い出した。   (ホッとしている場合じゃない。もうすぐ……、もうすぐだ……)  靴を脱いで、すのこに上がる。  普段はすぐに靴を手に取り靴箱にしまうが、今日の大真はその簡単な動作すらもたついていた。  制服のズボンの裾にある小さなほつれを見つけてしまい、それを引っ張ったり、すのこの端にある汚れを見つめたりする。 「……はあ」  大真は自分でも不自然だと分かっていたが、いつまでもほつれをいじる指を止められないでいた。 「何かあった?」  案の定、背後から慧司に話しかけられた。  慧司は、すのこの上にしゃがみ込んで靴を握ったまま、なかなか立ち上がる様子のない大真の顔を覗き込む。  大真は振り返ることなく、「……別に」とだけ短く返した。  それからようやく靴を持ち上げると、大真は慧司の三歩後ろからゆっくりと自分の靴箱へと向かう。 「あれ? 手紙が入ってる」  慧司の声を聞いて、大真は立ち止まった。 (……ああ、ついにこのときが来てしまったんだ)  靴を入れようとした慧司は、そこに手紙が置かれていることに気づき、白い封筒を取り出した。  慧司は、少し遅れて隣に並んだ大真に、ひらひらと振って見せながら笑う。  封筒は、何の柄もないシンプルなものだった。宛名も書かれていなければ、裏側にシールが貼ってあるわけでもなく、ただ、糊付けしたあとだけが残っている。  大真はそれを数秒見つめた後、やや震えた声で「へえ……」とだけ返事をし、手紙からも慧司からも視線を逸らした。

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