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再会の手紙。あなたに届きますように。
「言わないってことは、キスしてほしいってこと?」
「……馬鹿か? そんなわけ、ないだろうが」
「じゃあいい加減好きだって言いなよ」
「……俺だって! でも、俺が、それを言ったらダメだろうが」
何のために今まで、とぶつぶつ言いながら、黒崎は響から少しずつ離れて行った。
(そこまで言ったらもう……)
「どうして?」
離れていこうとする黒崎の手を掴み、響は強引に引き寄せた。黒崎が響の手を振り払う。
「お前も……! 俺も、男で……、その、年齢も違うし、幼馴染だから」
俯いたまま、黒崎がまた数歩分後ろに下がった。
(そんなの、最初から知ってるよ……)
響は、黒崎が離れた分、また距離を詰めた。
「男と幼なじみに関しては、それは俺には通用しない。年齢が気になるなら、二十歳になったらいいってこと? 来年じゃん」
「……それでも、ダメだ。せめて、今の俺くらいじゃないと」
「あと十年ってこと? まあ別にいいよ、待つから」
「待つってお前なあ……」
(だいたい片想い歴で十年なんてとっくに超えてるし)
はっきりしない黒崎に、響は腕を組んだ。
俺だって、好きな気持ちをのんきに抱えているわけではない。
もう、どうしたって元の関係には戻れないんだから。
「俺だってちゃんと、考えてるよ。だからあっちゃんが、誰にも浮気せずに、あと十年俺を待っとけばいい。俺はこれからもずっと、この気持ちは変わらないから」
「でもさ……って、えっ! う、あ!」
響は、ぐちぐちうるさい黒崎を抱き上げた。
やめろ! と叫んだ黒崎が、ジタバタと抵抗する。
(今度こそ、離さない)
「何年でも待つし、認めてもらえるように頑張る。あっちゃんが考えていること、不安なこと、全て跳ねのけるから。俺が、ちゃんとするから!」
「響、降ろせって!」
背中をガンガン叩く黒崎を無視し、響が駅のほうへと歩くと、いよいよ焦ったようで黒崎の動きが大きくなった。
叩くだけで通用しないと思ったのか、黒崎が髪の毛を引っ張る。
(痛い……! 束で抜けそう……!)
それでも無視して歩く響に、黒崎はまた「降ろせ!」と叫んだ。耳がキーンとする。
「嫌だね。今日は一緒に家に帰って、おばさんに息子さんをくださいって言う。俺には、そのくらいの覚悟があるよ」
「はあ!? おまっ、やめろ……!」
「今の身長の半分もない頃から、俺はあっちゃんのことが好きだったの。死んでもこの気持ちは変わらないけど、今世でだって必ず報われてやる」
「響、お前やばすぎだろ……」
今は何を言っても聞かないと諦めたのか、黒崎は抱えられたまま大人しくなった。けれどそのせいで、いまだ身体が震えていることに気づいてしまった。
「あっちゃん……」
響は黒崎を降ろすと、正面から抱きしめた。何か言いたそうにしつつも、黒崎は離せとは言わない。
あっちゃん、と響がもう一度名前を呼ぶと、片手だけ響の腰に添えられた。
(今はこれだけで充分だ)
あのとき冷たい態度を取ったり、引越しまでして離れたあっちゃんの気持ちを考えると、こうして気持ちをぶつけることは、正しくないのかもしれない。
それでも俺はあっちゃんがいない人生を歩めないし、この気持ちは何があっても止められない。
(全部、俺の責任でいいから)
「……あっちゃん、大好きだよ。いつか、お帰りなさいあなたってやれるように頑張るね」
「……はあ、まだ覚えてたのかよ」
だから覚悟して待ってて。
この気持ちが届いたのだから、その先は何にだってなれるよ。
「あっちゃん、夢みたいだね」
「……別に、夢にしなくたって、」
「はは、やばすぎる。あっちゃん、来てくれてありがとう」
「はいはい……って、う、あ!」
もう片方の手も腰に添えられるのを待たず、響は黒崎を再度抱えると、お姫様抱っこにし直した。
「響、さすがにそれはダメ! やめろよ!」
うわあ! と叫んだ黒崎が響の頬を叩いた。暴れれば暴れるほど、響は離さないと力を込める。
「ははっ」
「響! 響ってば!」
響、と呼ばれる音が、懐かしくて心地良い。
「やめない!」
響は大事に抱えながら、何度もくるくると回ってみせた。
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