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 はっとしてそちらを見ると、生徒会会長──アルシオン・オーシウェールが立っている。  シロナガスクジラゆえんの長身。レンも身長は百八十センチある。しかし、アルシオンはレンを見下ろすほどの大きな体躯だ。オルキウスよりも大きい。  豊かな金髪がさらりと揺れる。  (げっ……王道攻略対象まで来た……!)  最悪だ。  絶望しかけて、はたと気がつく。  (あれ……? これ、シナリオ通りじゃ……?)  ゲーム導入のシナリオと全く同じ展開をしている。この後、アルシオンは……。 「ホホジロザメのレン。貴様、また問題を起こしているのか」  そう言って、忌々しそうに睨みつけられる。 「あはは。暴れ鮫くん、またやってるね」  後ろでは会計が楽しそうに笑い声を上げる。 「大丈夫ですか?」  庶務がアクアに優しく話しかける。  全部、知っている。  レンは背中に冷や汗が流れるのを感じた。 「ああん? なんだよ、会長サマ。やんのか?」  勝手に口が動き、勝手に手が動く。  両手が戦闘用に硬化し、雷がバチバチと鳴った。  カフェテリアのざわめきが大きくなる。  (ちょ、待て……! 違う……!) 「はあ……これだから、暴れ鮫は。相手になるか?」  アルシオンがため息を吐いて、そっと目を閉じる。目を開けると、その目が紫色に光り輝いていた。王族の瞳だ。  ゲームのシナリオ通り。  レンは続く展開も知っていた。  この後、レンはアルシオンの威嚇に乗ろうとするが、学園長がやってきて騒ぎをおさめられる。  そして、「次に会ったら覚えとけよ」と憎々しげに吐き捨ててカフェテリアを出ていくのだ。  (い、いやだ……!)  アルシオンを睨みつけて、口を開きかけた時。 「何してるんだ、レン」  聞き慣れた、低い声がした。  振り返る。 「オル……」  そこには、オルキウスがいた。  黒と白の髪。薄く微笑んだ口元。金色の目。  急に息がしやすくなって、体が自由に動くようになった。 「オルキウス様……!」 「なんで暴れ鮫なんかに話しかけて……?」  今度は困惑の声が周囲から上がる。  オルキウスはレンとアルシオンの間に立った。 「何かあったのか?」  柔らかく微笑みながらアルシオンに問うオルキウスを、レンは泣きたい気持ちで見つめた。 「暴れ鮫が、編入生に絡んでいたんだ」 「……へえ。そうなのか、レン?」  オルキウスがレンを見る。レンはぶんぶんと首を振った。 「ち、ちげえよ!」 「だそうだ」  オルキウスはアルシオンに笑いかける。それでもアルシオンは納得がいっていない様子だった。 「では、なぜ編入生に話しかけていた?」  ゲームとは違う会話。  レンは驚きながらも、必死に言葉を紡いだ。 「お、脅してた訳じゃねえよ。その、友達に……なりたかっただけだ」  その瞬間、オルキウスの金の目が鋭く光った気がした。 「友達?」  ぴくりと眉を上げたオルキウスは、低くつぶやいた。 「お、おう……」  レンはオルキウスに驚きながらも、小さく頷く。  オルキウスは黙り込んでレンを見つめていた。 「あ、あの……」  その時。後ろで見ていたアクアが声を上げた。 「そういうことでしたら、あんまり彼を責めないであげてください」  そう言ってアルシオンたちに向かうアクアは、見た目とは裏腹に肝が据わっている。  レンは一連の流れを信じられない思いで見ていた。  オルキウスが登場してから、ゲームの本筋とは変わっている。  (どういうことだ……?)  オルキウスは、金の目でじっとレンを見つめていた。  (あれ……?)  その時、オルキウスを見て、レンはふと思い出した。  (オルって、ゲームにいたっけ……?)    

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