17 / 35

9-1 いざ、生徒会へ

その後は、シナリオ通り学園長がやってきて騒ぎを鎮めた。  ただ、ゲームと違うのは、レンの誤解が解けたこと。それから──オルキウスがいたことだった。  レンは午後の授業でぼーっと窓を眺めた。 「暴れ鮫、最近なんで皆勤なの……?」 「すごい真面目に教科書開いてんじゃん……」 「怖……」  生徒たちのひそひそ声も耳に入らない。  レンはペンを手に持ったまま考えていた。 『なんでシャチいないの!? シャチこそ王道の攻略対象じゃん!』  優太だった時、『蒼ロイ』をプレイして、真っ先にそう嘆いた。  シャチは王道の海洋生物で、人気も知名度も高い。別名、海のギャングだし、キャラも作りやすいだろう。  その時、ふと頭の隅で設定資料集のページが思い浮かんだ。 『いやあ、最初は別のキャラも攻略対象としていたんですけどね』  開発者インタビューだった。 「え、それってシャチでは?」と思ったのを覚えている。  当時、一番怪しいと言われていたのが、ゲーム本編には登場しない生徒会副会長だった。  まさにオルキウスのポジションだ。  オルキウスはビジュアルも飛び抜けて良い。明らかに攻略対象と同じくらい力が入れられている。 『ライバルキャラとして制作していたのですが、どうしても別キャラクターとのイベント量が多くなってしまって…… 』  当時ネットではいろんな噂があった。  未実装の理由は明かされていない。 「……あの」  考え込んでいると、誰かに話しかけられた。 「あ?」  反射的に凄んでしまう。  しかし、そこにいた人物を見てレンは目を見開いた。 「……アクア?」  そこには、少し怯えたように顔を引き攣らせているアクアがいた。 「授業、終わりましたよ」 「お、おう」  確かに見てみると、もうすでに授業は終わっていて、放課後になっている。 (なんで俺に……?)  アクアがなぜ自分に話しかけたのかわからず、訝しんでいると、アクアがにこりと笑った。 「良かったら、一緒に生徒会の見学に行きませんか」 「……は?」  思わずぽかんと口を開ける。ギザ歯がだらしなくのぞいた。 「僕、生徒会に入ろうと思うんです。アルシオンさんに誘われて。でも、一人では行きにくいので。副会長さんと仲が良さそうでしたし」  アクアの物おじしない様子に、レンは驚いた。  昼休みにアルシオンへ意見した時も驚いたが、今度は自分から暴れ鮫に話しかけてきた。 (……肝、据わりすぎだろ)  自分とは大違いだ。 「な、なんで俺……?」  かすれた声が出た。  アクアの口元が弧を描いた。 「僕たち、お友達でしょう?」  レンは敗北を感じた。  なんの勝負かはわからない。  でも、目の前で笑うアクアが、眩しく見えた。

ともだちにシェアしよう!