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「お邪魔します」 「……邪魔するぜ」  その後、レンはアクアの後ろから生徒会室の扉をくぐった。   礼儀正しく頭を下げるアクアの後ろで、レンはポケットに手を突っ込んだまま入室する。  我ながら、柄が悪い。でも、普通に入室しようとしても自然とこうなってしまう。  オルキウスと目が合った。オルキウスは目を一瞬見開いた後、アクアに視線をやってすっと目をすがめた。 「……やあ。君はカフェテリアの子だね」  オルキウスが笑顔でアクアを歓迎する。なんと握手までしようとしている。 「あ、どうも」  アクアもにこやかにその手を取った。  (お、俺だって握手したことないのに……!)  衝撃が走るが、すぐに思い出す。  (……いや、待てよ) 『関係ない。行くぞ』  そう言われて、手をつないだ。  (俺の方が上だ……!)  どうだ、オルキウスの手は意外とでかくて包容力があるだろ。そんなことを考えてじっと握手を見つめていると、低くて威圧感のある声が聞こえた。 「なぜ、鮫がここにいる」  レンを睨みつけているのはアルシオンだった。アルシオンが大股で歩いてくるので、レンは不敵に笑って待ち構える。  (なんで俺ってこうなるんだ……?)  争いは好きじゃない。  前世の記憶を思い出す前なら、むしろ好んでいた。でも、今はただただ怖い。  それなのに、挑発してるようになってしまう。  アルシオンが山のように目の前に立ち塞がる。 「……な、なんだよ……やんのか?」  優太なら一目散に逃げているところだが、レンの足は動かない。むしろ一歩前に出て好戦的に見上げてしまう。 「二人とも。落ち着いて。近いよ」  オルキウスの腕に抑えられて、ハッとする。  すっかり王子様モードのオルキウスが笑顔でレンとアルシオンを引き離す。 「まずは彼らの話を聞こうじゃないか」 「……そうだな」  オルキウスの言葉に、アルシオンはため息をつくと、しぶしぶ頷いた。  一言で場を納めてしまったオルキウスに、レンは思わず尊敬の眼差しを向けた。 「僕、生徒会に入ろうと思います」  レンはハッとした。 (生徒会に入るのは王道ルートだ)  序盤のアクアの選択肢は二つある。一つは生徒会に入ること。もう一つは入らないことだ。  生徒会に入る選択肢を選ぶと、生徒会役員とのルートに定められる。  (でも……)  今回はシャチのオルキウスもいる。それはどう影響するんだろうか。  そして、はたと気がついた。  (あれ、俺もいるじゃん)  悪役令息である自分もいる。本来なら、アクアが生徒会に入ったことで、レンの裏ルートにはいけなくなる。  しかし、なぜかここには自分がいる。  頭に『断罪回避』の文字が駆け巡る。  レンは気がついたら口を開いていた。 「俺も、生徒会入る」  そう言った瞬間、悲鳴が上がった。 「あ、暴れ鮫くんが……!? ちょちょちょ、どういうこと!? めっちゃ面白いんだけど!」 「えええ。大丈夫ですかねえ」  会計が興奮したように机をバンバン叩き、庶務はおっとりと目を見開いている。  そして、アルシオンは憎々しげにこちらを見ていた。  アクアは前髪に隠れて表情はあまり見えないが、口元が驚きの形に開いている。まさか入るとは思わなかったのか。  レンはオルキウスをちらりと見た。  オルキウスはなんとも言えない表情をしていた。  王子様スマイルが崩れて、レンと二人でいる時の『オル』の顔になっている。  レンは堂々と宣言した後で、だらだらと冷や汗をかいた。  

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