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「……もういい」
低くつぶやき、オルキウスは波の方へ踵を返した。
「オル? どこ行くんだ?」
「少し泳ぐ」
不安そうな声が背中の向こうから聞こえる。
海獣化して、夕焼けで赤く染まった海を泳ぐ。
深くまで潜る。
そうすると、日の光も届かない暗い海中に辿り着く。
整然としない胸の内をもてあましながら、ひたすら泳いだ。
冷たい海の中で、頭を冷やす。
――そうしていると、何かが近づいてくるのがわかった。
泳ぐ速度を上げる。
すると、そいつも追いかけてくる。
また速度を上げる。
シャチの自分の方が、ホホジロザメよりも持久力がある。
しばらくするとだんだん距離が開いてくるが、そいつは諦めない。
「……」
オルキウスは、ふっと速度を緩めた。
しばらくして、隣に誰かが並ぶ。
そちらを見ないまま泳いでいると、控えめに体当たりされた。
「……」
まだ無視をしていると、とんとんと、諦めずに体当たりされる。
じろりとその顔を見ると、ホホジロザメがぴったりと寄り添ってきた。
(こいつは……本当に……)
とたんに、腹あたりに巣食っていた重々しい炎が勢いを弱めていく。
仕方なく泳ぐ速度を緩めると、心なしか嬉しそうにその尾びれが動いた。
オルキウスは、しばらくホホジロザメと寄り添いながら、暗い海の底を静かに泳いでいた。
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