32 / 35

16-1 攻略!

 生徒会役員だけへの任務だと思い込み、話を半分ほど聞き流していたレンは首を傾げた。   「……そう睨むな。これは俺の意思じゃない。王家からの勅命だ」 「え」  その言葉に、目を見開く。  フィンが驚いたように声を上げた。 「王家って……アルシオンの実家?」 「そうだ」 「ひゃあー。やっぱ暴れ鮫くん、そんな強いんだ」  アルシオンが苦々しそうに腕を組んで言う。 「……俺は反対したんだがな。やつの戦力は一個大隊以上だと元老院が判断したんだ」 「えっ、一個大隊!? 暴れ鮫くん一人で!?」  フィンが驚きの声を上げる。  レンも驚いていた。  (え、俺そんなに認められてんのか?)  なぜだろう。  喜ばしいはずなのに、素直には喜べなかった。  前世の自分なら、「そんな大役、無理です」と逃げ出していた気がする。 「元老院かあ。相当すごい人たちに認められてるんだねえ」  ルカが感心したように言う。  その言葉に、レンはふと疑問に思った。 (あれ? 元老院なんて、ゲームにいたか?)  この世界に元老院という組織があること自体は知っている。  王国の最高意思決定機関だ。  だが、攻略本にもシナリオにも一度も名前が出てこなかったはずだ。    (すごそうな人たちなのに、そういや原作に登場しねえ。おかしいな……?)  考えていると、ふと無言だったオルキウスが席を立った。 「俺は……レンたちが行くのは反対だな」  一瞬、生徒会室がしんと静まり返った。  レンははっとしてオルキウスを見上げる。 「オル……?」 「えー、なんでよ。絶対暴れ鮫くんいた方が良いじゃん~。アクアだって、最近頑張ってるじゃん」  レンは信じられない気持ちでオルキウスを見つめる。  オルキウスはレンを見ないまま告げる。 「正式な役員ですらない補佐まで危険に晒す必要はない。未知のダンジョンだぞ」 「だが……勅命だ」 「勅命、ね……」  オルキウスはふと目を伏せる。  その金色の瞳に陰がかかったように見えた。 「どうした、オルキウス。らしくないぞ」  アルシオンが眉をひそめた。オルキウスは一つ息を吐くと、レンとアクアの隣に立つ。 「二人を行かせるなら、いつでも帰還魔法が使えるように準備しておいてほしい」 「……いいだろう」 「お、オル……。俺なら大丈夫だぜ?」  レンが腕をまくってその逞しい腕を見せると、オルキウスが呆れたようにため息を吐いて首を振った。 「……なんにせよ、俺が二人を守るから」  オルキウスの言葉に、レンは胸の奥がぎゅっとつかまれたような気がした。  ぽやっとオルキウスを見つめる。  そして、はっとして隣のアクアを見た。  アクアは大きな目を丸くしていた。  その白く透き通った頬が薔薇色に染まっている気がして、レンはとっさにアクアの肩に腕を置いた。 「お、俺がいるんだ! 安心しやがれ! 誰も怪我なんてさせねえ」  そう言い切ってギザ歯を見せながらスマイルを作って見せる。  オルキウスはなぜかますます不機嫌になったように、黒い笑みを深くした。 (俺、また地雷踏んだか……?)  レンは理由のわからないオルキウスの黒い笑みに、内心冷や汗をかきながら首を傾げた。

ともだちにシェアしよう!