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17-1 生きている
黒墨が晴れてきて、ようやく海の青さが戻ってくる。
レンはしっかりと握っていたアクアの方を振り返った。
「アクア! 大丈夫……か……」
そこにはアクアと――にこにこと黒い笑みを浮かべているオルキウスがいた。
「お、オルっ!?」
(な、なんで……!?)
ぎょっと目を見開くと、アクアのもう片方の腕をオルキウスが掴んでいた。
(え、えええ~……)
やっと二人になれると思ったのに。
好感度アップの大切なイベントなのに。
「レン。……ちょっと良いかな」
ぽん、と肩に大きな手がかかって、びくりと肩が跳ねた。
「アクア。防御魔法をかけておいた。あと、俺の魔力と紐づけておいたから、何かあったらすぐわかるから。……ちょっとレンと話しても良いかな」
「あ、僕はもちろん大丈夫です。それに、そこまでしていただかなくても……」
「まあ、何かあっても――」
そこでオルキウスはレンの肩に置いた手にぐっと力を込めた。
「この、|最強の《・・・》レンがなんとかするみたいだから」
そう言うオルキウスは満面の笑みだ。
(ひ、ひいぃ……)
「行くよ」
そう言ってずるずると引きずられるように岩陰に連れて行かれてしまう。
「ちょ、オル……っ! なんなんだよ!」
そう言ってオルキウスの顔を見た瞬間。
レンは息を飲んだ。
「……っ」
金の瞳が、静かな怒りをたたえてレンを見据えていた。
その怒気に、思わずびくりとする。
「……お前は」
オルキウスが口を開く。ひどく低く、押し殺したような声だった。
「わざとはぐれたな」
「……」
レンは何も言えなかった。
ひく、と頬がひきつる。
喉から掠れた細い息が漏れた。
「……わ、悪い」
「どれだけ危険なことか、わかっているのか」
「……で、でも」
「――〝俺なら、守れる〟?」
ようやく絞り出した声に、硬い声が被さる。
オルキウスの鋭い眼光に射抜かれて、レンはとっさに目を逸らしてしまう。
「未開拓のダンジョンだぞ。王族部隊も三階層までしか行けなかった。お前は確かに強い。だが――」
顎を掴まれる。
下げていた顔を上げさせられた。
金の目には、怒りと――心配が見えた。
「あまりにも無謀すぎる」
レンは顔を歪めた。
「――お前の目的は知らないが、みんなを……自分自身を危険にさらすような真似はやめろ」
「……っ」
――違うんだ。
断罪を回避したいだけで、みんなを危険に晒したいわけでは――。
とっさに口を開きかけるが、思い直して、ぐっと歯噛みしてうつむく。
「アルシオンたちに合流するぞ」
「……おう」
低く告げたオルキウスに、レンは俯いたまま小さく頷く。
頭上でため息が聞こえた。ぐっと目を瞑る。
すると、ふわりと頭に何かが乗せられた。
はっとして顔を上げると、オルキウスがレンの頭に手を乗せていた。
「……一人で突っ走るのは、悪いクセだ」
やわらいだ声と、目元。
「オル……」
ぐっと喉元に何かが迫り上がってくる。
――本当は、何もかもオルキウスに打ち明けたい。
だけど、言えない。
言えるわけがなかった。
「悪い……」
レンはしょんぼりとしてうなだれるしかなかった。
オルキウスの腕がぴくりと動いてレンに伸びたかと思うと、途中で止まり、静かに下げられる。
「……戻るぞ」
オルキウスに頷いて、レンは重い足取りでその後に続いた。
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