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第4話 吉宮SIDE

道野との秘密の関係が始まってから、すでに半年が過ぎていた。今日もいつものように家に二人でいる。 何気なくテレビで再生した動画を見始めたら、見終わっても自動で流れてくる仕様のせいで二人とも時間を忘れて見続けていた。 我に返り時計を確認した時には、時刻はすでに二十三時半になっていた。道野が家に来たのが九時頃なので、二時間も見ていた計算だ。 すぐ隣でクッションを抱きしめながらテレビを見ている道野。その笑顔は相変わらず美しいが、たまに声をあげて笑う姿が子供のように無邪気で可愛らしかった。動くたびに香ってくる香水の匂いも全てが愛おしい。ずっとこの時間が続けばいいのに、と願ってしまう。 「ん~!面白かったあ」 ちょうど区切りのいいところで動画が終わり、道野が伸びをしながら言った。 「この人の動画、大学生くらいの時によく見てたんだよね。もうかれこれ七年以上前か」 自分で口にして改めて実感する。時間の流れはとても早く、物事はどんどん移りゆく。この関係性もいつか終わりが訪れるのかもしれない。道野に触れられることが出来なくなる時が。 「吉宮……?大丈夫?」 彼が心配そうに顔を覗き込んできた。 どうやら考えていたことが顔に出てしまっていたようで「深刻そうな表情してるよ?」と、言われてしまった。 「大丈夫だよ。ちょっと疲れてるのかも」 「そっか……最近また新しいプロジェクトが始まって忙しいんだから、ちゃんと休まなきゃ。やらなきゃいけない時に頑張れるようにさ」 「そうだね……ありがとう」 「うん……じゃあ、今日はもう遅いし、俺かえ………」 「だめ」 もしこのままバイバイしたら、もう来てくれないような予感がした。まだ彼を家に帰す気はない。 「でも、もう遅いし……」 時計を見ながら、困ったような表情をした。 道野の弱みにつけ込むのは自分でも気が引けるが、このまま手の内から逃げられてしまうのはもっと嫌だった。だから、ありったけの『好き』という気持ちを言葉に込めながら、手を差し出した。 「おいで」 少し強引にお願いすれば、彼は断らない。それを知っていた。そしてその予想は正しく、道野はおずおずと差し出した手の指先を握ってきた。ほのかに感じた熱をしっかりと握りなおす。 「吉……」 彼が「吉宮」と言い終わるよりも先に手を引いた。 温かい手を引きながら、寝室までの廊下を歩く。寝室に着くと、電気のスイッチを押し、つまみを回した。一瞬電気が神々しく輝くが、つまみの動きと共に暗くなっていった。ちょうどいい明るさのところで手を離した。ベッド脇まで手を引いていき、そこで向き直る。 道野は下を向いていた。そのせいで、表情が読み取れない。離した手を今度は上に持っていき、顎に触れた。少し力を込めて上を向かせる。 淡い光に照らされてほのかに色づいた頬に、魅惑的に開く唇の隙間、水分を含んだ瞳がさらに心を掻き乱した。 「道野……」 掠れる声とともに顔を寄せると、道野はまつ毛を震わせながらその翡翠のように輝く瞳を閉じた。もし恋人だったら、ここで「愛してるよ」なんて言って唇を重ねるんだろうか。 そんなことができたら、どんなに幸せか。

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