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第6話 吉宮SIDE

道野に俺のパジャマを着させると、身長はそこまで大差がないはずなのに、体格が違うせいかダボダボとしてしまっていた。 「違うのにする?探したら多分もう少し小さいサイズのも……」 「うんん、これで大丈夫。ちょっと大きいけど」 そう言って微笑んで見せた。 その見ている人の気持ちを掴んで離さない妖艶な笑みに、これまで何度心を奪われてきたことか。また心拍数が上昇した。 「えーっと、寝よっか?もう二時過ぎてるし。泊まってってよ。全然迷惑とかじゃないから」 「本当?」 「うん」 「じゃあ、そうさせてもらおうかな……」 道野は少し頬を赤らめながら返事をすると、ベッドに潜り込んできた。 前なら「うんん。申し訳ないから帰るよ」と言ってさっさと服を着て帰ってしまったのに、今日はいつもと様子が違う。それはいいことなのか、それとも望んでいないことへの予兆なのか………とりあえず彼の意としているところは分からないが、この一瞬を大切にしたい。 俺は道野が寒くないように毛布を肩まで引き上げた。 「ありがとう」 「うん」 その後、二人とも何も声を発さず、ただ静かな時間が流れていった。 すぐ近くから感じる人の体温。それを意識するたびに心拍数が一段階ずつ上がっていった。 「「…………っ」」 ふと手を動かすと、温かく、それでいて滑らかな手触りのものに一瞬触れた。ビックリして慌てて手を離す。きっと位置的に道野の手だろう。 握りたい。小さな手を優しく包み込んで温もりに触れたい。 ゆっくり、ゆっくりとさっきの場所まで手を戻す。 もう何回も体を重ねてるのに、こういう恋人同士みたいなことをするのは初心者すぎて、心拍数が異常なほどに早い。きっと今彼にこの心臓の音を聞かれたら笑われるだろう。 ベッドを這うように進んだ手は、またあの温かさに触れた。ピクッと一瞬振える。でも離れてはいかない。それを肯定だと受け取り、勇気を出して指先を握った。 大丈夫。手は離れていかない。 それどころか、やんわりと握り返してくれている気がする。俺の錯覚だと言われてしまえば、そうだろうと思ってしまうような、本当に微々たる握り返す圧。でも、ここで嫌がられないのなら、ちゃんと握っても大丈夫だろう。 ゆっくりゆっくりと指を絡めていった。 手から伝わってくる体温。 ついさっきまで体全体に触れていたのに、今この一部分に触れている方が高い熱を感じる。 少しして手を握り返す力が加わった。本当に少しの力ではあったけれど、俺の作り出した妄想ではないと言い切れるくらいの力ではあった。 嬉しい。拒否せず受け入れてくれたのが嬉しい。こんな手を握るという簡単な行為なのに、なぜか初めて体を重ねた時よりも嬉しさがあった。 体を重ねている最中にも自然と手を握ることはあるが、その時とは全然違う。 いつもの流れのある中で握るのではなく、この静かな空気感の中で握ったことに特別さがあるのかもしれない。そしてそれを道野が受け入れてくれたことに喜んでいる。 横を見ると、道野は天井を見つめたままゆっくりと瞬きを繰り返していた。考え事をしている時の表情。窓から差し込んでくる月の光で青白く染め上げられた横顔が、美しくそこに浮かび上がっていた。 ぼーっとその横顔に見惚れていると、 「………そんなに、じーっと見ないでよ。恥ずかしいんだけど」 「あ、ご、ごめん」 チラッと彼が視線を動かし俺の方を見た。暗い部屋の中でもはっきりと分かるほど、顔が真っ赤になっている。 そんなに顔が赤くなっているのは、俺のせいかそれとも緊張してくれてるのか。他の人の前でもそんな表情をするか。俺の前だけであって欲しいと願ってしまう。 繋いでいる手と反対の手を道野の頬に伸ばした。滑らかな肌にそっと触れる。 「………んっ」 手が冷たかったのか、彼は眉間に皺を寄せ目をつぶった。うすっらと瞼を開けた瞬間、そのふっくらと膨らんだ赤い唇に自分の唇を優しく触れ合わせた。 俺たちはただ都合のいいときに体を重ね合わせる「セフレ」 でも心の奥底にある「好き」という気持ちだけは確かだ。だからどうか、触れ合う部分を通じてこの気持ちが君に伝わりますように。

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