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CM出演?

地区シリーズ進出を決めて数日後。 クラブハウスへ入るなり、陽彩は監督に呼び止められた。 「藍沢、朝倉。ちょっといいか」 陽彩と凜は顔を見合わせ、そのまま監督室へ向かう。 机の上には一枚の企画書が置かれていた。 「球団にオファーが来た」 「オファー?」 陽彩は首を傾げる。 「スポーツメーカーのCM撮影だ」 一瞬、部屋が静まる。 「……CM?」 「お前ら二人をご指名だ」 陽彩は数秒固まったあと、パッと顔を輝かせた。 「凜と二人? 出る出るー!」 監督は思わず笑みを浮かべる。 「まだ内容も聞いてないぞ」 「凜と一緒ならなんでもいい!」 迷いのない返事だった。 監督は苦笑いしながら、隣に立つ凜へ視線を向けた。 「朝倉はどうだ?」 凜は企画書へ一度だけ目を落とす。 「……断ったら?」 一瞬、部屋の空気が止まる。 「無理!」 陽彩が勢いよく凜の腕にしがみついた。 「こいつも出ます! 大丈夫です!」 「……」 凜は腕にしがみつく陽彩を一瞥すると、小さくため息をついた。 「ということで、俺ら出まーす!」 陽彩が満面の笑みで親指を立てると、監督は苦笑いしながら頷いた。 机の上の企画書を手に取る。 「撮影は来週のオフ。場所はロサンゼルス市内のスタジオだ。ユニフォーム姿だけじゃなく、私服での撮影もあるらしい」 そう言って二人へ資料を差し出す。 陽彩は興味津々といった様子でページをめくり、撮影内容へ目を通した。 スポーツブランドの新作モデル。 キャッチボールやトレーニング風景に加え、二人で並んで歩くカットやインタビューも予定されているらしい。 隣では凜も静かに資料へ視線を落としていた。 表情は変わらない。それでも最後まで目を通すと、静かに企画書を閉じた。 監督はそんな二人を見渡し、小さく笑みを浮かべる。 「詳細はまた後日連絡が来る。それまではいつも通り、野球に集中してくれ」 二人は揃って頷いた。 監督室をあとにし、クラブハウスへ戻る。 扉を開けた瞬間だった。 「お、帰ってきた」 「ボスなんて?」 近くにいたチームメイトたちが一斉に振り返る。 陽彩は隠す気など全くなかった。にやにやと笑いながら企画書をひらひらと振った。 「聞いて驚け!」 わざと間を空ける。 「俺と凜、CMでまーす!」 一瞬静まり返ったクラブハウスは次の瞬間、大きなどよめきに包まれた。 「マジか!」 「メジャーリーガーもここまで来ると、テレビに出れるのか……」 口々に飛ぶ祝福の声に、陽彩は照れくさそうに頭を搔く。 その隣で、凜は相変わらず表情を変えない。 「朝倉、嬉しくないのか?」 「テレビに出たくて野球やってるわけじゃない」 凜は淡々と答え、ロッカーへ視線を戻した。 一瞬、静まり返るクラブハウス。その空気を破ったのは陽彩だった。 「凜ってねー、俺と野球以外興味無いから♡」 「違う」 即答だった。陽彩はけらけらと笑いながら凜の肩へ腕を回す。 「え? 俺まさか野球より下?」 凜は少しだけ考えるように間を置き、淡々と言った。 「比べるものじゃない」 その一言に、陽彩の口元がゆっくりと緩む。 周囲からは「また始まった」とでも言いたげな笑い声が漏れた。 そんな二人のやり取りは、今やノヴァスの日常になっていた。

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