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メジャーリーグ、一年目

ロサンゼルス・ノヴァスへ移籍してから、一年。 異国の地で始まった新しい生活は、気づけばすっかり日常になっていた。 最初は苦戦していた英語も、今でもチームメイトと冗談を言い合えるほどになっている。 そして何より、一年前に復活した凜とのバッテリーは今やメジャーリーグを代表する存在となっていた。 試合中継では、二人の名前が取り上げられない日はない。 『今年も朝倉と藍沢のバッテリーは絶好調ですね』 『そうですね。朝倉投手の安定感はもちろんですが、それを最大限に引き出している藍沢捕手の存在は非常に大きいと思います』 『まさに阿吽の呼吸ですね。言葉を交わさなくても、お互いなにを求めているのか分かっている』 実況の言葉通りだった。 陽彩がミットを構えれば、凜は迷わず腕を振る。 高校時代から積み重ねてきた時間は、世界最高峰の舞台でも揺るぐことはなかった。 九回裏。ツーアウト。あと一球。 陽彩は静かにミットを構える。 視線が重なる。サインはひとつ。 凜は迷いなく振りかぶった。 白球を糸を引くように伸び、陽彩のミットへ吸い込まれる。 「ストライク! バッターアウト! ゲームセット!」 球場を埋めつくした歓声が、一斉に弾けた。 『ロサンゼルス・ノヴァス、地区シリーズ進出決定です! 朝倉、藍沢の最強バッテリーが、今日もチームを勝利へ導きました!』 陽彩は勢いよく立ち上がると、キャッチャーマスクを脱ぎ捨て、そのままマウンドへ駆け出した。 「凜っ!」 高校時代と何一つ変わらない笑顔。 凜はそんな陽彩を見つめ、小さく息を吐く。 「ナイスピッチング!」 陽彩が拳を突き出すと、凜も静かに拳を合わせた。 その光景に、スタンドからさらに大きな歓声が湧き上がった。 試合後のクラブハウスは、勝利の熱気に包まれていた。 あちこちでハイタッチが交わされ、今日のプレーを振り返る声が飛び交う。 「今日の最後のストレート、やばかったな」 「バッター、完全に振り遅れてた」 「このまま地区優勝するぞー!」 誰かが声を上げると、クラブハウス中から歓声が上がる。 陽彩も勢いよく拳を突き上げた。 「そのためにも、次も頼むぞ。最強バッテリー」 チームメイトが笑いながら二人を指差す。 陽彩は得意げに凜の肩へ腕を回した。 「ねっ? 凜くん」 凜は一瞬だけ陽彩を見たあと、小さく頷く。 「ああ」 短い返事だった。それでも、その一言だけでチームメイトたちは満足そうに笑った。 二人はメジャーリーグでも年々その完成度を増し、チームの勝利に欠かせない存在となっていた。

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