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第3話 ※
「座れますか? ……うーん。寝た方が楽ですかね」
ほとんど抱えられるようにして、ベッドに座らせられる。
連れてこられたのは、一番近くにあったラブホテルのようだった。
でも、今はそんなことはどうでも良かった。
「は、花宮……っ」
目の前の体に縋り付く。
体が勝手に動くようだった。
後頭部がじんじんと熱を持って、ただ一つだけの欲求に支配される。
(欲しい、欲しい……っ)
花宮に縋り付くと、また、あのいい匂いがした。
「あっ……」
ずくん、と腰が疼く。
「やば……」
花宮が小さくつぶやいた気がした。
見上げると、その目にいつもの爽やかさはなく、艶やかな熱が浮かんでいる。
「……西条さん。アルファじゃなかったんですか」
「はあ……っ。アル、ファ、だ……っ」
目の前の男はいったい何を言いたいのだろう。
とにかく、欲しいのに。
もどかしくて、手を伸ばす。
腰にするりと腕を回すと、びくりと花宮が反応した。
「西条さん……だめですよ」
「やだ」
自分が何を言ってるのかもわからない。
自分はこんなに狂おしいほどの熱に灼かれているのに、目の前の男はそうではないのか。
そう思うと、なぜかしくしくと胸が痛んだ。
「やだって……。あー、もう!」
触りたい。触って欲しい。
そう思って体を引き寄せるのに、花宮は距離を取る。
「……なんで」
じわりと、涙が滲んだ。
花宮は怒ったような顔をしていた。でも、その垂れた目元は赤らんでいる。
目の奥で、理性と本能が戦っているのが見えた。
花宮が自分のカバンから何かを取り出した。手には水と――錠剤がある。
それを飲ませようとしてきたので、必死に頭を振る。
「いやだ……っ、花宮……っ!」
そうじゃない。
欲しいのは、それじゃないのに。
ぎり、と何かを堪えるように歯噛みした花宮が水をぐっとあおった。
その様子をぼんやりと見ていると。
ぐっと頭の後ろに手をやられて、口付けられた。
「……っ!」
その瞬間、視界いっぱいが鮮やかに色づいて、ふわふわとした多幸感と痺れるような快感に包まれる。
ごくり、と水を飲まされた。
夢中になって唇を合わせて、舌を絡め合う。
深くまで口付けると、足りなかった何かがカチッと音を立ててはまったような、そんな安心感があった。
体から力が抜ける。
飲みきれなかった水と、互いの唾液が口端から伝っていく。
「……ん、ふぅ」
夢中でキスを交わす。花宮はさっきまでつれなかったのに、今は何かが切れてしまったかのように激しく求めてくる。
息をつく間もないほどの口付けに溺れているうち、じわじわと腰から何かが湧き上がってくるのを感じた。
覚えのあるその感覚に、ぞくぞくと背中が震える。
「薫さん……っ」
花宮に名前を呼ばれた瞬間、弾けた。
ズボンの中でびゅくびゅくと震えて濡れる感覚に、すうっと薫は意識が遠のいていくのを感じた。
薄れていく視界の中で最後に見えたのは、どこか苦しそうな、嬉しそうな顔をした男の姿だった。
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