3 / 3

第3話 ※

「座れますか? ……うーん。寝た方が楽ですかね」  ほとんど抱えられるようにして、ベッドに座らせられる。  連れてこられたのは、一番近くにあったラブホテルのようだった。  でも、今はそんなことはどうでも良かった。 「は、花宮……っ」  目の前の体に縋り付く。  体が勝手に動くようだった。  後頭部がじんじんと熱を持って、ただ一つだけの欲求に支配される。  (欲しい、欲しい……っ)  花宮に縋り付くと、また、あのいい匂いがした。 「あっ……」  ずくん、と腰が疼く。 「やば……」  花宮が小さくつぶやいた気がした。  見上げると、その目にいつもの爽やかさはなく、艶やかな熱が浮かんでいる。 「……西条さん。アルファじゃなかったんですか」 「はあ……っ。アル、ファ、だ……っ」  目の前の男はいったい何を言いたいのだろう。  とにかく、欲しいのに。  もどかしくて、手を伸ばす。  腰にするりと腕を回すと、びくりと花宮が反応した。 「西条さん……だめですよ」 「やだ」  自分が何を言ってるのかもわからない。  自分はこんなに狂おしいほどの熱に灼かれているのに、目の前の男はそうではないのか。  そう思うと、なぜかしくしくと胸が痛んだ。 「やだって……。あー、もう!」  触りたい。触って欲しい。  そう思って体を引き寄せるのに、花宮は距離を取る。 「……なんで」  じわりと、涙が滲んだ。  花宮は怒ったような顔をしていた。でも、その垂れた目元は赤らんでいる。  目の奥で、理性と本能が戦っているのが見えた。  花宮が自分のカバンから何かを取り出した。手には水と――錠剤がある。  それを飲ませようとしてきたので、必死に頭を振る。 「いやだ……っ、花宮……っ!」  そうじゃない。  欲しいのは、それじゃないのに。  ぎり、と何かを堪えるように歯噛みした花宮が水をぐっとあおった。  その様子をぼんやりと見ていると。  ぐっと頭の後ろに手をやられて、口付けられた。 「……っ!」  その瞬間、視界いっぱいが鮮やかに色づいて、ふわふわとした多幸感と痺れるような快感に包まれる。  ごくり、と水を飲まされた。  夢中になって唇を合わせて、舌を絡め合う。  深くまで口付けると、足りなかった何かがカチッと音を立ててはまったような、そんな安心感があった。  体から力が抜ける。  飲みきれなかった水と、互いの唾液が口端から伝っていく。 「……ん、ふぅ」    夢中でキスを交わす。花宮はさっきまでつれなかったのに、今は何かが切れてしまったかのように激しく求めてくる。  息をつく間もないほどの口付けに溺れているうち、じわじわと腰から何かが湧き上がってくるのを感じた。  覚えのあるその感覚に、ぞくぞくと背中が震える。 「薫さん……っ」  花宮に名前を呼ばれた瞬間、弾けた。  ズボンの中でびゅくびゅくと震えて濡れる感覚に、すうっと薫は意識が遠のいていくのを感じた。  薄れていく視界の中で最後に見えたのは、どこか苦しそうな、嬉しそうな顔をした男の姿だった。  

ともだちにシェアしよう!