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第20話

僕の上で腰を振っていた希良利がドサリと僕の横に倒れ込む。 正直、めちゃくちゃ疲れていたし、早く寝てしまいたいけれど。ちゃんと片付けないといけない。 僕はへとへとの体に鞭打って、ベッドから起き上がった。 「どこ行くの」 隣から腕が伸びてきて僕の腰に絡まった。 「え、えっと…、片付けないと…」 希良利がすぐに寝たと思っていた僕は驚いてしまった。 おかげで心臓がバクバクいっている。 「片付け? 明日ホテルの人がやるからいいでしょ、寝よ」 「あと…、お尻の中のものも出さなきゃいけないので…」 僕がそう言うと、彼は数秒の()の後、溜息を吐いた。 こればかりは仕方がないと思う。 さすがにお腹を下すのは嫌だ。 すると、彼ものっそりと起き上がった。 「俺も手伝う」 「え!? いや、いいです!慣れてるので! 長濱さんは明日も仕事ですし寝ててください」 と僕が言うと鼻を摘ままれた。 痛い。 「口調戻ってる」 「ご、ごめん」 「隣に睦月がいないのに眠れるわけないだろ。 俺も一緒にやる」 い、いやいや、見られるのが恥ずかしいって言ってるのに!! 中のものを出すってほとんど排泄と同じことをするんだから。 それでも不機嫌そうな希良利に圧し負けて、僕はよたよたと浴室に向かった。 僕が洗っている間ずっと見てるし、それどころか一緒に指を突っ込んで掻き出そうとしてきた。嫌すぎる。 全て出し終え、浴室でぐったりしていると見かねた希良利が僕を横抱きにして運び始めた。 「な、き、希良利くん! 自分で歩けるよ!」 とジタバタしたが「早く寝たいから俺が運ぶ」と言われてしまい、僕は大人しく身を任せた。 ベッドに下ろされたが、僕は起き上がってシーツを剥がした。 ホテルのそれはしっかりとシーツが張ってあり、取り外しに若干苦労した。 それでも、自分から分泌されたであろう色々の液体の上で彼を寝かせるわけにはいかなかった。 自宅でなら、替えのシーツを出せるが、ここはホテルなのでマットレスの上に直で寝るしかない… 意味があるのか分からないけれど未使用のバスタオルを敷いてベッドメイキングは終了した。 後ろで見ていた希良利は「そのままでいいのに」と言ったが、僕は「べちょべちょの上で寝るのは嫌でしょ」と返した。 「別に…、睦月のだったら構わないけど」 「…、僕が気になります」 「はいはい」 希良利は溜息を吐くと、ベッドに潜り込んだ。 そして「睦月」と僕を呼び、自分の横を叩く。 僕は「…はい」と小さく返事をしてそこに体を滑り込ませた。 すると、間髪入れずに抱きしめられた。 「はぁ…、ベッドが1個しかないって最高」 「え?」 希良利の言っていることが分からずに訊き返す。 「睦月はドライだから、事後はどれだけ抱き潰しても自分の部屋に帰っちゃうし」 「ドライ!?」 そんなこと言われたのは初めてだ。 まあ情に厚いかと言われたらそれは違うけれど。 「終わった後にこうやっていちゃいちゃしたり、余韻に浸ったりしたかったんだけど。いつも」 拗ねたように言われて僕は「ええ…?」と困惑する。 希良利のほうこそキャラじゃないことを言う。 そこで、パズルのピースがハマったような気がした。 「え、えっと、じゃあエ、エッチの後にいつも機嫌が悪かったのって…」 「睦月が俺を置いてさっさとどこか行っちゃうから、だけど?」 「な…」 なんだってー!? いつもてっきり僕が何か嫌な事したり、気持ち悪かったからじゃないかって落ち込んでたのに…、そんなことだったのか。 「そんなことでって思ってるだろ。 ドライな睦月には分かんないよ、俺の繊細な男心なんて」 希良利が僕の髪の毛をくるくると指に巻き付ける。 意図せず相当伸びてしまった僕の髪。 「僕、あまり希良利くんに好かれていないと思ったから、早く帰らなきゃって思ってて…、家事とかもあったし」 「好きでもない奴を抱きませーん」 僕の言い訳に、彼は子供の様に不貞腐れて言った。 まさか…、そんなことであの長濱希良利が不機嫌になっていたなんて…、可愛い。 そう思い至った僕も相当ヤバい奴なんだろうな。 「希良利くん」 「…何?」 「今度から、希良利くんが良いって言った日は、希良利くんの部屋で眠るようにするね」 僕がそう言うとぎゅっと回された腕に力が入った。 彼の胸板にぎゅうぎゅうに顔を押し付けることになって、ちょっと苦しい。 「睦月可愛い好きどうしよう」 「…、明日も早いので寝ようか」 僕がマジレスすると「チッ、これだからドライな奴は」と舌打ちされた。 それでも僕に回された腕は緩まないので、僕は嬉しくなって彼の胸に顔を埋めて眠った。 翌々日には希良利の事務所から交際を否定する文書が出され、1週間くらいでようやくほとぼりが冷めた。 念のためさらに2~3日の間を開けて希良利が自宅に戻って来た。 それから数日は、希良利が片時も離してくれなかったんだけど、その話はまた後日。 本編 了

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